新顎十郎捕物帳
講談社文庫(入手難)

久生十蘭の顎十郎捕物帳にほれ込んだ作者が、十蘭の遺族の了解を得て書き始めたシリーズ。
児雷也昇天
宮地芝居の役者が芝居の最中に殺され、殺した役者は行方不明に
湯島天神の門前でむしろがけの宮地芝居を打つ市川登見五郎一座。初狂言は曽我と児雷也を組み合わせて大当たり。芝居の中で児雷也が斬り殺す菖蒲太夫は女形の岩井珊瑚で、こちらは美形で大人気。
そんなある日のこと児雷也の登見五郎の刀が本身で、舞台上で岩井珊瑚が斬り殺された。芝居の筋で登見五郎はそのまま釣り上げられたが、そのままどこかに消えてししまった。登見五郎が珊瑚を斬り殺し、逐電したとしか見えなかった。

浅草寺消失
浅草寺といえば江戸のシンボル。その浅草寺が消えたという
中間部屋でウダウダする顎十郎のもとに駆け込んできたひょろ松。昨日大川で助けられた男を巡る不思議な話を始めた。
その男は水戸の在から江戸見物に出てきた弥次郎という男だったが、旅の途中で知り合った江戸の商人佐原屋と一緒に江戸に入った。
最初に見たかった浅草寺に案内してもらい、浅草寺が見える佐原屋に泊めてもらったが、翌朝には浅草寺はなくなっていたという。
佐原屋がこれは江戸の大事が起きる前兆、一緒に逃げようと大川に船を出したが、船から落ちて危うく水死するところ。そこに通りかかった絵師に助け上げられ、花川戸の寮に連れて行かれ手当てを受けた。
弥次郎が切れぎれに語ったその話に絵師は驚いたが、そこで話疲れた弥次郎は寝てしまった。しばらくして、様子を見に行くと弥次郎の姿はなく、土足の足跡があったので、誰かに誘拐されたらしい。
もちろん浅草寺は消えてなどおらず、江戸に大事もなかったのだが…

えげれす伊呂波
イギリス仮領事館で副領事のポケットウォッチがなくなった。イギリス側は当時、副領事室の庭先にいた警備の旗本をと疑うが…
イギリス仮領事館は高輪の東禅寺におかれていた。その領事館の副領事のポケットウォッチがなくなった。最後にポケットウォッチを見てから6〜7分、書記官に呼ばれて領事は部屋を空けた。
その間ドアは開いたままで、庭には警備の侍安藤辰馬が犬と戯れていた。やがて部屋に戻ってきた副領事がポケットウォッチがないことに気がついたが、その間ずっと庭にいた安藤は誰も部屋に入らなかったと証言。
それならば安藤が犯人ではないかということになったが、疑われた安藤は切腹する言い出す。イギリス側も切腹などされては寝覚めが悪く、奉行所にうちうちに相談が持ちこまれた。それがめぐり巡って顎十郎のところに廻ってきた。

からくり土佐衛門
見世物小屋の水死体の人形が、本物の水死体に変わっていた。下手人として捕まったのは、なんとひょろ松
顎十郎が目を掛けている岡っ引、神田の松五郎ことひょろ松が南町の藤波友衛にしょっ引かれた。両国回向院前の見世物小屋の水死体が本物の水死体に入れ替わった事件の下手人として捕まったのだ。
この水死体の主は、大盗賊の木賊の伝兵衛とよく似た男で、ひょろ松は前に伝兵衛をお縄寸前のところで取り逃がしていた。それが、昨夜ひょろ松が仙台堀沿いを歩いているときに、伝兵衛と出合い取っ組み合って堀に落ちた。ひょろ松は上がってきたが、伝兵衛はどこかに逃げたらしく上がってこない。その後ひょろ松は近くの番屋で濡れた着物を着替えて帰った。
しかし藤波の見方は、伝兵衛は堀に落ちた時に溺死し、ひょろ松がそれを引き上げた。ところが、よく見るとこれが別人。仕方なく見世物小屋の水死体と入れ替えたと言うからくりと読んだ。北町奉行所はひょろ松が捕まったということで大騒ぎ。中間部屋でとぐろを巻いていた顎十郎を呼び出した。

きつね姫
大名の下屋敷に連れ込まれた顎十郎は、狐のついた姫君から狐を落としてくれと頼まれた。
叔父森川庄兵衛の頼みで、叔父が差し回した駕籠に乗った顎十郎が行き着いた先は、大名か大旗本の屋敷。暫く待たされて、側用人石川左馬之助と名乗る武士の言うには…
屋敷の十八になる姫がに狐がついたらしく、半月ほど前からおかしなことを口走るようになり、上屋敷に置けなくなって下屋敷に移した。行者を呼んで狐を落とそうとしたが、いずれも失敗で、かえって暴れて行者が怪我をする始末。仕方なく座敷牢に入れてあるが、その狐を落として欲しいというのがお願いの筋。
顎十郎は、さっそく案内されて座敷牢に入るが、なるほど姫は妙なことばかり言う。最後に「よこになった「た」」の謎を解いたら、姫から出て行こうと姫に取り付いた狐が言った。顎十郎は暫く考えて、この謎を解くと姫はぐったりして意識が戻った。しかし…

幽霊旗本
幽霊屋敷と噂される旗本屋敷。顎十郎はひょろ松に頼まれて、その幽霊屋敷に借金のかたにさらわれた町娘お花を助けに行くことに。
小普請組旗本木村軍之助は養子に入ったものの女癖が悪く梅毒にかかり、奥方、妾に移したあげくに二人の女を狂い死にさせた。奥方も妾もそれを恨んで、夜な夜な幽霊になって出るという噂。この噂が広がり奉公人は誰もいなくなり、一人暮らしの広い屋敷は荒れ放題で幽霊屋敷の名が付いた。
軍之助は喰うための賭場を開き、旗本や御家人、大商人や坊主などが上得意。大工の棟梁甚九郎はその幽霊屋敷の賭場に誘われて、100両という借金を作った。
軍之助の友人で賭場に出入りする旗本松平帯刀が甚九郎のところにきて、借金のかたに一人娘のお花をさらっていった。証文には期日までに借金を返さなかったら、お花を差し出すとあった。騙されたのだ。
お花は縁談が進んでいて、甚九郎はひょろ松に相談、ひょろ松は顎十郎に相談した。

闇かぐら
顎十郎とその好敵手南町奉行所同心藤波友衛がさらわれた。連れ去られた先は大名家の下屋敷、お部屋さまが捜して欲しいものがあると言うのだが…
顎十郎と南町の藤波がさらわれ、連れ去られたのはさる大名家の下屋敷。ひょっとこや外道、お多福のお面で顔を隠した面々が語るには、屋敷に中でものがなくなったり現れたりの不思議なことが立て続けに起こった。
なくなったのは、お部屋様(大名の側室)の狆、端渓の硯、印籠、女中が借りてきた貸本、現れたのは上屋敷にあるはずの文箱、握り飯が1つ、殿様が愛用していた使い古しの筆、死んだ子供の鯉幟。そのうち文箱は廊下に放り出してあったものの、その後にまた消えてしまった。
問題はその文箱、拝領品で葵の紋がついているという。顎十郎は藤波とともに失せ物探しを始めたが…


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