自来也小町
文春文庫

宝引の辰捕者帳第2弾。怪盗もの、毒殺もの、道中ものなど盛りだくさん。
自来也小町
このところ江戸では連斎という名の人物が書いた蛙の画が、縁起物として大評判。連斎は氏素性も知れず、画もけっして上手くはないのだが、百両以上の値がついて取引される。その連斎の画が立て続けに3枚盗まれた。盗人は自来也と自署を残していた。
そして4枚目の連斎の蛙が盗まれた。場所は呉服織物問屋大坂屋清兵衛のところ。清兵衛の妻ふさが急死し、その葬儀のときに掛軸にして架けてあった連斎が盗まれた。今度も自来也は自署を、ふさの遺体の側の屏風に墨黒々と残していた。
盗人は大坂屋に張り込んでいた宝引の辰にすぐに捕らえられたが、その男は自来也ではないと言い張った。調べてみると、男が持っていた掛軸からは、画の部分が既に切り取られていたし、男は無筆だという。

雪の大菊
牡丹雪の降る寒い夜に、大川端で花火が上がった。冬のさ中の花火はあちこちに波紋を巻き起こした。
八丁堀の旦那方は、花火は戦の合図だとして江戸市中を自ら見廻り、大川で心中しようとしていた男女は花火で我に帰って、死神が落ちたように晴々として家路につき、商家に強盗に入った賊は、心中をやめた男女に見咎められて、お縄になった。
さてさて人々に波紋を投げた真冬の花火、いったい何の目的で打ち上げられたのか…

毒を食らわば
質屋の富山屋四郎兵衛、紺屋の内田屋六郎次、講釈師の神田伯馬の3人の間にトラブルがあり、それを鳶の頭の現八がなんとか丸く治めた。そこで手打ちということで4人でふぐ鍋を囲む。
その夜、家に戻った四郎兵衛は気分が悪くなり、大急ぎで医者が呼ばれたが間に合わず、四郎兵衛は医者の目の前で胸をかきむしって息絶えた。
ふぐの毒にあたったというのだが、同じ鍋をつついた他の3人は何ともない。1人だけふぐにあたるなどということが、あるのだろうか…

謡幽霊
宝引の辰の子分算治が飛鳥山に月見に行った帰り、新シ橋に差し掛かると橋の上に2人の黒い影が見えた。何やら怪しの気配を感じた算治が駆けつける前に、2人は何かを川に投げ込んで逃げていった。
算治は番所から船を出し、川を探るとすぐに死体があがった。さっきの2人が橋の上から投げ込んだものらしい。死体を調べてみると、帯の間から将棋の駒が出、さらに下帯からはイカサマのサイコロも現れた。
算治は死人が賭け事好きな賭場荒しと睨んで、前から目をつけていた将棋指南所の三桂のところに行ってみたが…

旅差道中
保土谷宿の旅籠新保土屋で相部屋になった中村屋惣兵衛、伊勢屋安右衛門、虚無僧、宝引の辰と妻の柳に娘の景、連次に新吉の8人。
惣兵衛と安右衛門は道中で知り合って2人で江戸に向かい、連次と新吉も同じように道中で知り合ったばかり。惣兵衛は大事そうに道中脇差を持ち、それを宿の帳場に預けていた。
夜になりめいめいが勝手に風呂に行ったりしていたが、やがて惣兵衛が熱を出し苦しみだした。聞けば道中で休んでいるときに蜂に刺されたという。医者が呼ばれたがすでに手遅れで、息を引き取ってしまった。
惣兵衛は息を引き取る前に新吉に、帳場に預けてある道中脇差を吉原の紀の字屋にいる妙という女に届けてくれと頼んだ。宿場役人が来て、さっそく脇差を改めるとなんとそれは竹光。
惣兵衛が持っていたのはずっしりと重い脇差だったはず。役人は宿中の者と物を改めたが、どこからも脇差は出てこなかった…

夜光亭の一夜
不景気にもかかわらず、神田鍛冶町新道の寄席割菊は大変な繁盛で、毎晩押すな押すなの大盛況。呼び物は長崎から来たという女手妻の夜光亭浮城一座。
この浮城というのが異人とのハーフで、なんとも色っぽく、つづら抜けの手妻も工夫があって面白いというので、お客は浮城目当て。事件のあった夜も2階の座席は満員で立錐の余地もない。
浮城が登場して手妻をはじめ、いよいよお楽しみのつづら抜けにかかった途端、建物が大きく揺れたかと思うと2階の床が抜けた。
割菊はもともと料理屋だったところを改造し、2階を座席にしたために通し柱がなく、そこに連日無理に大勢の客を詰め込んだために、耐えきれずに2階の床が落ちたのだった。2階から1階に落ちた客は20人ほどで、いずれも軽症だたったが、1階の奥の間で席亭の多久兵衛が死んでいた。
頭を激しく殴られたらしく、最初は材木でもあたったのかと思ったが、駆け付けた宝引の辰が調べると、火鉢にあった土瓶の底に血が付いており、多久兵衛は土瓶で何者かに殴られたらしい…

忍び半弓
日本橋平松町の薬種屋皿屋の店先。番頭の重兵衛とこのあたりを縄張りとする岡っ引き男十郎が話をしている。鳥追いの2人の女が来て、重兵衛は手代の長太に言いつけて、鳥追いに金を渡す。
奥からは旦那の九右衛門がお客を送って出てくる。そのお客とは蝦夷のシャクシャインという男で、毎年今頃になると熊肝を売りに来るのだった。
鳥追いは去りかけ、シャクシャインは送り出され、ちょうどそのときに店の前を駕籠が通り、ふと男十郎がそれを見て再び振り返ると重兵衛の胸に矢が深々と突き立っていた…


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