鬼女の鱗
文春文庫

宝引の辰捕者帳第1弾。不可解な事件から人情ものまで盛りだくさん。
目吉の死人形
呉服店井筒屋の娘で18歳になるお桃が、自分の部屋で首を吊って死んでいた。お桃は、いつものように昼飯を済ませ、通いの常磐津の師匠小智太夫と稽古をした。
暫くして小智太夫は帰って行き、その後お桃は一人で三味線の稽古をしていたらしく、その音を女中や出入りの職人が耳にしている。
やがて女中が部屋に入ってみると、首を吊ったお桃の死体がぶら下がっていた。だが、お桃の首にははっきりと2本の紐の痕があった。お桃は自害したのではなかったのだ。
犯人は店のものと思われたが、誰かはわからない。そして、この事件を人形つくりで有名な目吉が見世物にした。この見世物が大層な評判で…

柾木心中
鈴ヶ森の沖合一里あまりの柾木沖といわれるところに釣りに来た宝引の辰と娘のお景だったが、お景がとんでもないものを釣ってしまった。
若い男の水死体で、日本橋の袋物屋結城屋の手代弥七とわかったが、弥七の死体を引き寄せるともうひとつの水死体が浮かんできた。2つ目の水死体は老婆の者であったが、2つの死体の手首は堅く手拭いで縛ってあった。
弥七はいい男で女たちにも人気があったが、最近は吉原に出入りし花魁に惚れて店の金に手をつけて行方知れずになっており結城屋でも捜していたという。その弥七が花魁と心中するならともかく、老婆と心中するとは…

鬼女の鱗
彫物の親方のところに、ある時立派な侍がやって来る。丸に揚羽蝶と三つ鱗の比翼紋をある人物に彫ってほしいのだという。
故あって屋敷も理由も秘密だというが、若さに任せて親方は駕籠に乗せられて、その侍の屋敷に向かう。かなり大身の屋敷らしく、そこで若侍に比翼紋を彫り、続いて腰元にも同様の紋を彫った。
そのときから10年、浅草御門の手前の笑い稲荷の社で、瀬戸物屋の主人堀田屋六郎の血に染まった死体が見つかった。その太ももには10年前に親方が彫った比翼紋があった…

辰巳菩薩
吉原錦木楼の花魁紅山に惚れてしまったわたし。だがしがない手代のわたしには、吉原通いなどできるわけがない。吉原が火事になり、錦木楼が焼け落ちたときに、深川で仮営業。
そんなときに紅山の顔を見に行くくらいだが、紅山もわたしの相手をきちんと勤めてくれる。ついに紅山に会いたさに相場に手を出し、負けが込んで店の金に手をつけたわたし。
どうにもならなくなって死ぬ気になり、暇乞いのために紅山に会いに行った。そこで一部始終を話すと、翌日には紅山は50両を用立ててくれた。
それを機に心機一転したわたしは、店を辞めて仕事をはじめ、それが当たってとんとん拍子に出世し、ついに大店の主になった。
辰巳芸者になって小兵衛と名乗っていた紅山を身請けしようと行ってみると、紅山は「一生ここにいるさだめ」と身請けには応じなかった。
しかし、わたしのことを嫌いになったわけではなく、わたしとは始終逢瀬を重ねた。そんなある日、神田川を漂っていた屋形船の中で小兵衛こと紅山の死体が見つかった。

伊万里の杯
華東山捕台寺にある安岡家の墓の前で、旗本安岡秀幸のつまおあきの死体が見つかった。おあきは覚悟の自害とみえて、父の下を刃物で一突きにし、裾も固く縛って乱れがないようにしてあった。
男でもためらい傷ができるというのに、女だてらにそれはみごとなものだった。墓で自害となれば寺社奉行の管轄だが、安岡家では外聞を憚って住職と相談して死骸を家に運び病死として処理した。
所は変わって大川。水練をしている連中が水死体を見つけた。日本橋旗町の瀬戸物屋今利屋の若旦那勇吉とわかったが、勇吉は数日前から行方がわからなくなって、今利屋でも心配していたところであった…

江戸桜小紋
江戸の郊外、深川のはずれの砂村に咲かずの桜があるという。花の季節なのに、なぜかその木だけが花をつけない。松吉は噂に聞くその桜を見に行ったが、すでに枯れて倒れてしまってもうないという。
深川七不思議のひとつ愛染様の六福神。なぜか弁天様だけがないという。松吉は咲かずの桜を見に行った帰りに、六福神を見に行ったが、その石像が何者かによって見るも無残に打ち壊されたという…

改三分定銀
吉原の草市をひやかしていた宝引の辰と松吉は、若旦那風の男から財布を抜き取るすりを発見、追いかけたがすりは盗った財布を辰たちに投げつけて逃げた。
辰たちが戻ってみると若旦那もどこかに消えていた。仕方なく番所に行って財布を預けて中を改めるが、中からはめきしこだら(メキシコダラー)という銀貨が見つかった。
横浜で流通している銀貨で、改三分と刻印が押してあった。掏った男はわかっていた。がっこの芳という常習犯だったが、しばらくしてがっこの芳が殺されて神田堀に浮いているのが見つかった…


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