殺しはエレキテル
文春文庫

蘭学の大家曇斎先生こと橋本宗吉を主人公に、大坂を舞台にした捕物帳。
殺しはエレキテル
異国から珍品を扱う唐高麗物屋の蝙蝠堂でエレキテルの実演が行われた。志願して実験台になって男は、恍惚とした表情で眠り込んでしまい、店の奥に運ばれて布団に寝かされた。
エレキテルでそんな状態になることはないと、心配した蝙蝠堂では橋本曇斎先生に往診を頼んだ。先生が出かけようろすると、蝙蝠堂から再び使いがきて、寝ていたはずの男が消えてしまったから必要ないと言ってきた。
さても不思議な出来事と、その日はそれで済んだが、数日後に浮世小路の江戸唄の師匠蔦の家多見江が、エレキテルで頭痛を直そうとしてそのまま死んだらしいという。

幻はドンクルカームル
盆屋と呼ばれる主に男女の密会に使われる貸座敷で女が殺された。その隣の部屋には律儀の利吉という、目明しや奉行所の情報屋が昼寝をしがてら、部屋での情報を得ようと張り込んでいた。
利吉は盆屋のようなところでは、男も女もつい本音の会話を交わすものだと考えて、よくこの座敷を利用していたが、実際は密会の現場を押さえて恐喝まがいのことにもしているらしい。
隣の部屋を覗けるように節穴をあけ、そこから時々様子を覗いていた。そして、その日も昼寝から覚めると同じように節穴に目をやったが、そこに飛び込んだのは男が女の首を絞め殺す場面だった。

闇夜のゼオガラヒー
横堀川に浮かんだ屋形船の中で、ひとりの侍が胸を矢で射抜かれて殺された。その侍は西国のさる藩の蔵役人で、名を多賀目佐十郎といった。
佐十郎は腐敗した侍で、南地の芸者千代竜を口説いてものにしようと船を仕立てたのだ。仕事と割切って船に乗った千代竜だったが、顔も性格も悪い佐十郎にどうしてもなじめず船を降りる降りないで口論となった。
逆上した佐十郎が千代竜の首に手を掛けたところに矢が突き刺さり、佐十郎は命を落とし千代竜は命拾いをした。その夜、横堀川の北岸にある寺の山門の楼上に鐘巻飛衛軒という弓の名人が一人でお籠りをした。
飛衛軒は特製の弓一本だけを持って、成就祈願をしたのだ。山門の楼上への段梯子ははずされ、山門の周囲には少なからぬ人々が見守っていた。
佐十郎の胸に刺さった矢は、飛衛軒が持って上がった特製の矢に間違いなく、飛衛軒は夜中に神仏のお告げがあって、邪なる者が船に降り退治せよと告げたために、矢を射ったといい奉行所に自首してきた。
山門から船までの距離は100m以上、夜に矢を正確に船の中に射って人を殺すことなど不可能だった。

木乃伊とウニコール
大坂の豪商匠屋西次郎は、大坂では珍しく現代で言うところの政商であった。大藩の大坂屋敷の留守居役なども出入りしており、この日も千明陣内というさる大藩の大坂詰めの役人がやって来た。
千明が匠屋に来たときは西次郎は外出中であったが、番頭が気を利かして奥のオランダ座敷に通した。やがて西次郎が帰って来てオランダ座敷に向おうとする寸前に、座敷の方から短筒の轟音が…
まっさきに駆けつけた西次郎の目の前には、短筒を撃たれた千明が転がっていた。すぐ後ろから来た番頭に医者を呼びに行かせ、改まって千明を見ると白い角のようなもので体を刺されていた。さらに座敷を見回すが、そこには千明以外誰の姿もなかった。
医者が来て千明の死亡を確認し、奉行所の手先が事件を調べるが手に余る。手先は曇斎先生のところに相談に行くと、千明に刺さった角はウニコールという西洋にいる一角獣の角とわかった。

星空にリュクトシキップ
曇斎先生の弟子藤田顕蔵に助けられたのは、大坂城代大久保安芸守忠真の股肱の臣潮田兵之丞。潮田は瀕死の重傷を負っていて、その口から語られたのは、大久保安芸守追い落としの一件。
大久保安芸守を落としいれようとして、朝鮮に返還する予定の黒真珠2個の片一方が盗まれた。この黒真珠は豊臣秀吉の朝鮮侵攻の時に日本軍に奪われた、朝鮮王家の秘宝で、長い間行方が知れなかったが、先ごろ廻りまわって大坂城代の屋敷にたどり着いたものだった。
幕府はこの秘宝の返還を条件にして、難航していた朝鮮通信使の再開を目論んでいた。ところがこの黒真珠の片方が紛失したのであった。
ここまで語って潮田は息絶えてしまったが、なんと潮田の懐から出てきたのは、黒真珠の片一方。盗まれたはずの黒真珠をなぜ潮田が持っていたのだろうか…

恋はトーフルランターレン
高津神社へお参りに行った唐高麗物屋の蝙蝠堂の疋田屋真知は、妖しげな若い男に出会う。さらにそこの遠眼鏡で異国船を見て、お供に来ていた丁稚の菊松に男を追いかけさせ、自分は港に異国船の正体を確かめに行った。
菊松は男を見つけられずに店に戻ったが、お真知がまだ帰っていないことを知る。その夜も、翌日も真知は戻らず、誰かにさらわれたと考えられた。
曇斎先生も呼ばれて蝙蝠堂で鳩首会議が始まったが、その席に石礫が投げ込まれた。それには手紙が包んであった。真知の手になるその手紙は、家を出て切支丹になると書かれていた。


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