妖鳥

私は眼を覚ました。いや眼を覚ましたはずだった。だが、闇はそこにわだかまり、暗く重く体にのしかかっていた。意識が徐々にはっきりするにつれて、わたしを襲ったのは…
わたしは誰? 若いの歳をとってるの? 家族はいるのいないの? 結婚しているのしてないの? そしてここはどこ? 暗闇を凝視して記憶を辿るがどうしても思い出せない。
なぜこんなところに…昨夜は何をしていたの…わからない。頭は痛み、息苦しく…誰か助けて…

喀血して入院した先輩刑事狭更奏一を見舞いに、聖バード病院を訪れた刈谷作弥は、病院前の雑木林の中で一人の少年がカラスの死骸を土に埋めてる場に遭遇する。
その少年はカラスが増えすぎて病院が困っているから…とごまかすような口ぶりで話した後、この病院では人が死ぬと、その夜は決まって黒い大きな鳥が飛んでくるという妙な噂があると言って姿を消した。
その後、狭更を病室に訪ねた刈谷は、そこで先輩刑事の臨死体験を聞かされる。狭更は一旦心臓が止まり、部屋の上から自分の死骸とそれを清めようとする看護婦の様子を見ていたというのだ。
そのときに狭更を担当した看護婦が見せた悪魔のような微笑が気になって死に切れず、気がつけばベッドの上で蘇生していたという。
医師や看護婦は心肺停止の直後に施した心臓マッサージが効いたと信じたが、狭更は看護婦の微笑の理由を知りたい一心で蘇生したと信じていた。
その狭更が刈谷に頼んだのは、担当した看護婦を探し出して微笑の理由を確かめることだった。狭更に言わせると女は天使なのか、それとも悪魔なのか…

刈谷は狭更の話を聞いた当初はごく簡単な依頼だと思った。だが、看護婦の担当表の記録は昨夜あったという小火で焼けてしまい、誰もそのときの看護婦が誰か記憶していなかった。
あちこちあたって調べるうちに、この病院では無菌室に入れられた重症で動くことすらできない患者が、首を吊って自殺したり、小火で焼死した看護婦の死体が消失したりと怪事件が続発していることがわかる。
しかも小火は消防にも警察にも届けず、焼死者は病死扱いで闇に葬ろうとしていたこともわかり、刈谷はその背後に重大な秘密が隠されていると確信した。
さらに調べていくと、焼死したのは狭更担当の2人の看護婦のうちの1人で、もう1人は行方がわからなくなっていた。どうもどこかに監禁されている気配であった。そういえば、聞き込みの途中でこの病院には見えない部屋があるという話があった…
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