ミステリ・オペラ

第2回本格ミステリ大賞、第55回日本推理作家協会賞受賞作にして、山田正紀の集大成ともいわれる作品だが、大傑作と絶賛される反面で謎に比してトリックの矮小さや人物の魅力のなさなどが指摘されている。
とにかく2000枚といわれる分量は読み応えがあって、密室殺人や貨車消失事件、古代戦車による轢殺、古代文字で書かれた占の見立て殺人、トランプの暗号、人間の空中浮遊など謎も盛り沢山のうえ、文章自体は読みやすく分量の割りにすんなりとページをめくれる作品である。

昭和13年、満州の辺境にある宿命城に向かう一行が、その途上で遭遇する数々の事件…
大連の図書館では目撃者がいる部屋の中に車椅子で入った人物がその部屋の中で殺され、現場には凶器はなくて部屋は密室同然、外と行き来できたのは鉄格子の嵌った通気窓だけであった。
奉天では満州に隠然と力を持つ人物が、自邸の地下に作られた宝物室の中で古代戦車によって轢殺される。宝物室に入るところは衛兵に見られているし、宝物室にはドアと天窓があるばかり。古代戦車は動かないように展示してあって事故とも考えられない。
そして宿命城では密室状態の城内の塔の中で女が殺され、その体は滅茶苦茶に切り裂かれていた。
さらに宿命城の至近の鉄道駅では、ゲリラに襲われて戦闘中に車庫にあった貨車が1両、中に積んであった荷物もろとも消失した事件があった。
宿命城に向かった一行の中には、最近宿命城付近で発見された殷の時代の甲骨文字を使った占が、これらの事件の見立てだったとの見方を示す者もいた。
これらの事件には小城魚太郎が雑誌に連載を開始したが、第1回の発表後に軍を誹謗するものとして発売禁止処分を受けた「宿命城殺人事件」という推理小説が絡んでいるようだ。

時は現代、萩原桐子は出版社に勤める夫祐介が会社の屋上から飛び降り自殺したという報に接する。祐介は仕事のうえで大きな失敗をして以来、社史編纂室に左遷されていた。
祐介は寒空のしたYシャツにコートを羽織った不思議ないでたちで、コートのポケットには半分に引き裂かれたトランプのカードのコピーがあった。
桐子にも自殺の動機はわからなかったが、近くのビルに勤めるハイミスの女が祐介が死ぬ前に空をふわふわと飛んでいるのを見たという。女が祐介が飛んでいるのを見てから、祐介の死体が発見されるまで40分近い時間があった。
警察も桐子も女の言う事には耳を貸さなかったが、桐子の周囲に女がまとわり着くようになり、桐子も段々と祐介の死に不審を感じる。
そして祐介の遺品の中から小城魚太郎作の「宿命城殺人事件」と、昭和13年に満州で起きた不思議な事件を纏めた善知鳥良一なる人物の手記が出てきた。
当時満州では建国の神として天照大神を祀る準備が進んでいて、宿命城を舞台にして啓蒙映画「魔笛」が撮影される予定であった。小城魚太郎も善知鳥良一も「魔笛」撮影のためのスタッフとして満州に渡っていたのだった。
夫祐介は宿命城を始め昭和13年に満州で起きた事件のことを調べていたのかもしれない…そう考えて善知鳥良一の手記を読み進むうちに桐子は平行世界に陥り、自身が萩原桐子なのか昭和13年の「魔笛」関係者なのかわからなくなってくるのだった。

島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -