ヴィラ・マグノリアの殺人

神奈川県の太平洋に沿った架空の町葉崎市。その海の近くにヴィラ・葉崎・マグノリアはあった。もともとこの一帯は前田という貴族の別荘のあった土地で、相続税問題でそこを切り売りした結果ヴィラ・葉崎・マグノリアができた。
乗り地の前田の土地は二分割され、坂上の方は人気ハードボイルド作家角田港大が買い取り屋敷を建てて住んでいた。
一方坂下の方には10棟のコテージ風住宅が建てられ、ヴィラ・葉崎・マグノリアとして売り出されたのだった。海に近いリゾートの雰囲気は充分だったが交通が便は極端に悪く、学校や病院など住環境も整っていなかった。
そのために住人の入れ替わりが激しく、3号棟は現在も空家であった。その空家に若い夫婦を案内してきた不動産屋が3号棟の玄関の鍵を開けると、そこには男の死体が転がっていた。

男は顔と指先を徹底的に潰されていて身元を示すものが一切なかった。指先を潰したのは指紋をわからなくするためであった。顔形はわからなかったが3本の歯が欠損し、未治療の虫歯も2本あった。
死亡推定時刻は2日ほど前であったが、その日は台風が襲いヴィラ・葉崎・マグノリアの住人達も家にこもり周辺は閑散としていたはずだった。
しかしほかには何の手がかりもなく、警察でも被害者は誰かを捜すことに精力の大半をつぎ込んだ。またヴィラ・葉崎・マグノリアの住民たちも事件の話で持ちきりで、住人の一人の経営するレストランに集まって食事をしながら事件の話をしたりもした。
一方ヴィラ・葉崎・マグノリアの住人達はいずれも個性的な面々が揃っており、住民間の対立も見られて、それがもとで感情的になったりもして警察の聞き込みも混乱するばかりであった。
中でもトラブルメーカとして名高いのが5号棟の松村朱実であった。朱実は独り善がりで、住人達の悪口や陰口を誰彼となく言い触らしては、近隣とトラブルを起こしいつも夫の健が侘びをして事態を収拾していた。
この朱実が住人達と話をする中で、事件の日にヴィラ・葉崎・マグノリアの近くで怪しい行動をする住人を見たと発言。そのときには住人達は、またいつも朱実の癖が出たと聞き過ごした。
しかし今度はこの朱実が自宅の5号棟の玄関で殺されていたのだった。昼間夫のところにヒステリーを起こした朱実から携帯電話がかかり、車で戻った夫が玄関を開けると、そこに朱実の死体が転がっていたのだ。
朱実が殺されたのは3号棟の事件との関連と思われるのだが…
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