正月十一日、鏡殺し

書下ろしの表題作ほか6篇。
盗聴
僕は予備校の友達の話を聞いて合法の無線機を買い、近所のコードレス電話や携帯電話の盗聴を始めた。
たわいのない話から不倫、脱税まで話はいろいろだったが、なかで「カチカチドリを飛ばせ」という犯罪めいた会話があった。「カチカチドリ」を飛ばす場所は秋葉原だったり、池袋だったり、原宿だったり…
カチカチドリとはいったいなんのことで、会話は本当に犯罪に関係があるのだろうか…

逃亡者 大河内清秀
タイのある安宿に逗留する日本人は、そこではトネガワという偽名を名乗っていた。その前の宿ではシモジョウと名乗り、さらにその前はマキセであった。男の旅券の名義は大河内清秀となっていた。
男はある犯罪を犯し逃亡者となってタイに逃げ込んだ。しかし既に大河内清秀の名は手配され、その旅券では出国できない。その大河内清秀の物語は…

猫部屋の亡者
衛藤雅和は猫好きな恋人望月久美子をひょんなことから自宅マンションで絞殺してしまう。雅和は久美子の浪費のために会社から金を横領していたが、それが監査でバレそうになり、自宅のパソコンでデータを改ざんしていたのだが、その最中にうるさく話し掛けられ、はずみで殺してしまったのだ。
雅和は久美子の死体を浴室に隠し、休日出勤して改ざんしたデータを入れ替え、その夜に近々セメントの流し込みが行われるプール建設現場に行き、久美子の死体を埋めた。
ところがその翌日から朝まだ寝ていると久美子の声が聞こえてくるようになったのだった。

記憶の囚人
家に中で殺された中年の女は、その家の主婦であった。火掻き棒で殴り殺されていたが、その死体の傍らにはこの家のドアの合鍵があった。状況からは、主婦が庭に出た隙に家の中に不審者が入り込んで中からドアに鍵をかけ、家に入れなくなった主婦が植え込みに隠してあった合鍵で家に入り、普請者に殺されたように見えるのだったが…

美神崩壊
幼馴染の窪田千秋は父親が死んで甲府の親戚のもとで暮らしていたが、十数年ぶりに都内に引っ越してきた。別れたときには千秋は何の変哲もない普通の女の子だったが、いまやトップモデルになっていた。久しぶりに会った僕は千秋にときめいた。ある日千秋のマンションを訪ねると、そこには顔と手を血だらけにした千秋がいた。

プラットホームのカオス
プラットホームの端に立つ、キャンプファイヤーの時のように肩を組んだ2人の中学生。その後ろには松葉杖をついた彼らの担任教師。そこに入ってきた通過列車。すると中学生の一人がバランスを崩し列車の前に落ちて即死した。
呆然とする同級生と教師。いったい事故か自殺か、それとも…

正月十一日、鏡殺し
遊美の母諏訪志保美と祖母須恵子は、遊美の父であり志保美の夫でもあり、さらに須恵子の息子でもある英和が交通事故死して以来不仲になった。
須恵子は決して大人しい性格ではなかったの志保美との同居を避けようとは考えなかったし、そんな須恵子に対して志保美はちょっとしたことで切れることが多くなった。
このままでは、いつか須恵子を殺しかねないと考えた志保美は働きに出ることにしたが、その披露が神経を苛立たせ悪循環に陥った。そんな母と祖母の様子を見た遊美は神様と教えられた鏡餅に願いを込めた。


島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -