さらわれたい女

立ち飲み形式の百円コーヒーチェーンの経営者小宮山隆幸のところに、妻の佐緒里を誘拐したという電話が入り、3千万の身代金を要求された。その日隆幸は佐緒里と昼食を取ったが、その後佐緒里は行方不明となった。佐緒里はもともと気まぐれな性格なので、隆幸が周辺を捜しただけであまり気にもとめずに会社に戻って暫くしての電話だった。
状況から電話は本物と思われ、隆幸はすぐに金の手配をするとともに警察に連絡を入れた。警察はすぐに動き、隠密裏に手配がされた。誘拐犯の指示で自宅で待つ隆幸と捜査陣の裏を書いて、翌日誘拐犯からのコンタクトは会社を通じてなされた。
身代金を車で隆幸自身が運べというものだった。伝言ダイヤルやダイヤルQ2を用いた指示で、最終的には中央道三鷹料金所の前で待つように言われたが、そこに架かってきた電話は警察の介入を理由に取引を中止するという電話。
一方、この間に誘拐犯は隆幸の実家にコンタクトをとってパニックに陥れ、まんまと金を奪っていた。完全に警察は裏をかかれたわけだ。
この誘拐犯は、はやらない便利屋稼業の男。だが誘拐事件は本物ではなかった。小宮山佐緒里が便利屋を訪れ、夫隆幸の愛情を確かめるためと称して狂言誘拐を依頼したのだ。それにしたがって便利屋は隆幸に脅迫電話をしたのだが、狂言だから最初から身代金を奪うつもりはなかった。だが実家を脅して金を奪ったのは便利屋の独断だった。
狂言誘拐に便乗したのだった。誘拐が演じられている間に佐緒里は、アメリカ旅行中の友人の部屋に隠れていた。熱帯魚の世話を頼まれており、鍵を預かっていたのだ。狂言とはいえ、誘拐されていた状況は残しておかなければならないので、便利屋は細かな指示を佐緒里に与えた。
その中に、手足を縛ることもあった。狂言と見破られないためには、手足に痕跡を残しておかなければならないからだ。だが、金を奪った便利屋がそのアジトを訪れると佐緒里は手足を縛られた状態で、首にパンティストッキングを巻かれ絞殺されていた。今度は便利屋がパニックに陥る番だった。
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