とらわれびと

森山亜紀子の弟雄一が殺された。雄一はまだ9歳、川崎にある大学病院の小児病棟に入院していたが、院内の渡り廊下で腹を切り裂かれ、内臓をめちゃくちゃにされていた。
この病院では1年前に小児科の医師遠野貴弘が同じように腹を切り裂かれ、内臓をめちゃくちゃのされて殺された。その半年ほど後には大学に通う砂原一郎が、さらに半年後には大学の職員の高野京介が同じように殺されていた。
いずれの被害者も小太りであるという特徴があるだけで、被害者同士の接点もなく、殺されるような共通の動機もなかった。高野が殺されたのは、雄一の事件からわずかに一週間前のことだった。
事件は連続猟奇殺人事件として捜査されていたが、捜査はまったく進展していなかった。そして犯人は第四の犠牲者にわずか9歳の男の子を選んだのだ。雄一もまた小太りであった。

雄一と亜紀子の両親はすでに亡くなっていた。2人は飛行機事故で両親を同時に失ったのだ。それ以来叔父と叔母のところに引き取られ育てられた。亜紀子は高校生だったが、雄一も学校に行けていれば小学4年生だった。
だが雄一は体が弱く、小児病棟に入ったきりであった。亜紀子は頻繁に雄一を見舞い、傍目にも仲のよい姉弟であったから、雄一の事件に亜紀子はショックを受けた。
その亜紀子は雄一を殺した犯人、それは連続猟奇殺人事件の犯人でもあるわけだが、その犯人を自分で見つける決心をして、数少ない友人の穂波留美に相談した。
留美は亜紀子と同じ高校に通う同級生で、亜紀子同様に友人がいなかった。留美は秋子の話を聞き、すぐに雄一殺しの犯人捜しを一緒にすることを引き受けた。

一方、同じ川崎の市民公園である夜、飯島鉄雄の父親が殺された。鋭利なナイフで刺し殺されてベンチに放置されたのだ。その後の捜査で目撃証言が得られ、事件の直前に鉄雄は若い女と一緒であることがわかった。
やがてその若い女が金田妙子という名前であることがわかる。それを聞いた飯島の友人金田忠志は驚いた。金田妙子とは忠志がまだ幼い頃に生まれてすぐに死んだ妹の名だったからだ。
忠志はまったく記憶にないのだが、そのことを母親に何度も聞かされていた。忠志はそのことを思い出し、そうなると妙子のことが気になって仕方がなかった。そして忠志の身辺に、妙子が生きているのではないかと思われることが起きた…
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