頭蓋骨の中の楽園

「記憶の果て」の暗くて重い雰囲気にまいってしまい、買ったまま積み上げておいて敬遠していたのだが、思い切って読み始めた。
「記憶の果て」とは比ぶべくもない筆力に少し驚いてしまった。暗い事は暗いのだが、苦痛ではなく、逆にどんどんページが進むではないか。
作品全体を貫くキーワードは首の切断。三流大学とはいえ、そこのミスコンで文句なく優勝をさらってしまうほどの女子大生菅野香織が死んだ。その死体からは首が切断され、どこかに持ち出されていた。
香織は不孝な女であった。兄の肇も香織が高校生の時に何者かに殺され、父親も遠い昔、自宅の地下室の中で首を吊って死んだ。
香織の兄の殺人事件は迷宮入りの様相を呈し、父親の自殺の原因もわからなかった。さらに今度は香織が何者かに殺され首まで持ち去られ…
香織には恋人がいた。現職の警視庁捜査一課の刑事田上優。田上は肇の殺人事件の捜査を担当する刑事の一人で、香織の事情聴取をした事がきっかけで交際をはじめ、今では同棲していた。
香織の死を知った田上は精神的に動揺し、警察では田上を香織の事件の捜査から外したが、田上は独断で香織の友人達の間を回り勝手に捜査をしていた。
その矢先に今度は同じ女子大世根本美江子が自室で死んでいるのが見つかった。やはり首は切断され持ち去られていた。鑑識の調べでは美江子の死は香織とほぼ同時期。
事件は女子大生連続首切り事件の様相を呈してきた。世間はこの猟奇的な事件に群れ、騒いだ。そしてもう一人、香織や美江子と同級の女子大生藤崎由紀の行方がわからなくなっていることが判明。
しかも藤崎由紀はすでに結婚しており、その夫のミステリ作家藤崎葵の書いたコミカルミステリの冒頭で、首を切断されて殺されたのがカンノという女子大生であることがわかった。
葵によれば被害者の名前をカンノに決めたのは由紀の発案だという。このミステリは香織が殺される前に発刊されており、はからずも事件の予告になってしまった。
しかもその名前を決めたのが由紀であり、その由紀も行方不明となっているのだ。いったいこの事件はどういう事件なのか…
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