誰かの見た悪夢

大学生諏訪醍醐は葛城夢摘とともに、夢摘の車で夏休みの帰省をすることにした。東京と夢摘の別荘のあるA県との間に醍醐の故郷があったので、醍醐にとっては好都合であった。しかも醍醐は夢摘のことを心ひそかに思ってもいたのだから…

途中のドライブインに立ち寄って食事を終え駐車場に戻ってくると、目つきの悪い男と白衣を着た青白い顔の男が夢摘の車の近くに停めたワゴン車のそばをうろついていた。
醍醐たちが男たちに関わらないように無視して出発しようとすると、目つきの悪い男がいきなり前方に立ち塞がって夢摘の車を強引に停車させた。そして後部席の人間を引き渡せといってきた。
醍醐たちが後ろを振り返るとそこには高校生と思われる人間がジャージを着て乗っていた。その人物はやはり高校生で、烏丸悠と名乗った。
悠は両親を亡くし、その後育ててくれた祖母も死んで、ドライブインの近くの樹海の中にある縫柄記念病院に引き取られたばかりだが、そこから逃げ出してきたという。
目つきの悪い男と白衣を着た青白い顔の男は縫柄記念病院から逃げた悠を追ってきたのだった。青白い顔の男は縫柄記念病院の医師で、縫柄紫郎、目つきの悪い男は私立探偵の鬼常と言った。
結局夢摘たちの車に紫郎と悠を乗せて縫柄記念病院まで送ることになった。それが悲劇の始まりだった…

縫柄記念病院は製薬業で名を成した縫柄一族が樹海の中に建てた病院で、病院とは名ばかりのところだった。交通不便でたいした医療設備もなく、患者は絶対来ないようなところだった。
樹海の中に建つ煉瓦造りの西洋館は、縫柄家の女当主菊乃と紫郎、それに菊乃の兄の之総という生き残りの3人が住んでいて、ほかに看護婦の名目で紫郎の愛人伊母呂小夜子が住み込んでいた。
そんなところに悠が引き取られてきたのだった。悠は菊乃の姉であり之総の妹である綾乃の孫であった。醍醐たちは悠を送りとどけるとすぐに帰るつもりであったが、思いのほか時間を食ったことと悠の懇願もあって一晩縫柄記念病院に泊まることになる。
そしてその夜、悠から病院にまつわる不気味な話を聞かされた。その翌朝、悠は首を斬られてた死体で発見された。庭にある井戸の手前に悠の首が据えられて病院を睨み、悠の胴体はパジャマ姿のまま井戸の中にあった。
醍醐たちは警察に連絡しようとするが菊乃に止められる。一日だけ待ってくれというのだ。紫郎も狂気の目つきで醍醐たちを脅し、仕方なく夕方まで待つことにした。
ところが事件はそれで終わらなかった。新たな犠牲者が出たのだ。しかも悠同様首を斬り落とされて…

島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -