シクラメンと、見えない密室

逗子駅のそばの喫茶店「美奈子」は美奈とその娘の奈子の2人でやっている店で、温室が付属しそこでは様々な草花が栽培されていた。そして美奈は店の常連客達が話す不可解な事件を見事に解き明かす才能を持っていた。
傷とアネモネ
19歳の浪人生直人の母親の利佳子が自殺未遂騒ぎを起こした。深夜、直人が帰って来ると家の前には救急車が停まり、利佳子が運ばれていった。利佳子は腹部を包丁で何か所も刺したが、命には別条はなかった。
直人は行きつけの喫茶店「美奈子」で、元世界的なモデルの母親は、自分勝手なことばかりし、あげくのはては自殺未遂までしてと嘆くが…

遠隔殺人とハシバミの葉
敵の落水日登美をのた打ちまわらせるには、ハシバミの枝で日登美に関係するものを激しく叩けばいいと喫茶店「美奈子」で教えられ、ハシバミの枝をもらってきた宇佐子。
言われたとおり深夜12時、呪文を唱えて日登美から贈られた金の生る木を呪詛とともに激しく叩いた。日登美は感情の起伏の激しい女で、ことあるごとに嫌がらせをし、この前は誰かをそそのかしてひったくりまでした女だ。
しかも宇佐子の部屋から見えるマンションに嫌がらせのために引っ越しまでした。そしていつも宇佐子のことを監視しているのだ。宇佐子は思いっきり恨みを込めて金の生る木を激しく叩いた。
日登美のマンションを見ると、何ということだろう、頭を押さえて日登美がのたうちまわっている。ハシバミの呪いが効いたのだ。さらにその翌日、日登美の死体が発見された。
鍵とドアチェーンが掛けられた部屋の中、上半身裸の日登美が息絶えていたのだ。背中を刃物で傷つけられ、現場で発見された刃物にはアコニチンが塗られていた。
刃物の傷自体は浅かったが、アコニチンの毒によって日登美は死んだのだった。明らかに殺人事件だが、ハシバミの呪いが効きすぎ誰かが日登美を手にかけたのだろうか…

シクラメンと、見えない密室
喫茶店「美奈子」の前の道路で草津陽香が車にはねられた。目撃した奈子のよれば、いきなり陽香が物陰からフラフラと道路に飛び出したという。事情はどうあれ意識がない陽香を病院に運んだ美奈親子だった。
陽香は怪我をしていたが命に別条はなく、やがて意識も回復した。そして重大な告白を始めた。陽香は双子の姉の高月美月を訪問したが、そこで喧嘩になり美月を突き飛ばしてしまった。
美月は倒れた拍子にどこかを打ったのか、倒れたままになっていた。大変なことをしたと思ったが陽香はそのまま高月家を出て、後は記憶もないままに病院に運び込まれたというのだ。
そして美月は死んでしまうかも知れないと泣き、美奈に美月を助けてくれと頼んできた。陽香の話を聞いた美奈が慌てて高月家に行くと、美月の夫の義邦と元家政婦の須山がいた。
事情を話し、陽香から聞いた離れに向かう。離れの2階に陽香がいう通り美月が倒れており、ガス湯沸器が不完全燃焼して一酸化炭素が充満していた。美月も倒れていたが、息はあった。
妊娠していた美月はすぐに病院に運ばれたが、美奈は事件の根本を作ったのは陽香だが、陽香が高月家を出たあとで第三者の悪意が働いたと推理した…

クリスマス・ローズの返礼
飛島の最初の妻は13年前に死んだ。トリカブトをよく似た薬草と間違えて煎じて飲んで死んでしまったのだ。そして昨年12月に後妻の史子が殺された。
飛島の家には小さいながらも離れがあり、雪もよいの夜に史子は殺されたのだ。ディスコで音響を担当している飛島が、夜9時半に出勤した時は史子は元気であった。
これから離れをクリスマスに合わせて模様替えをすると言っていた。飛島が家に戻ったのは12時20分。その夜は雪と霙が交互に降るような寒い天気で、その当時雪は約1センチほど積もっていた。
離れの周囲には離れに向かう史子の足跡と、少し離れたところに男物の靴で往復した足跡があった。何事だろうと飛島は離れに向かう。そこで妻史子の死体を発見したのだ。史子は花瓶で殴り殺されていた。
凶器の花瓶は死体のそばに転がっていた。ただ不思議なことに母屋の玄関から離れまでクリスマス・ローズの白い花弁が点々と落ちていたのだった。これが飛島史子殺人事件の概要だった。

オークの枝に、誰かいる
斎木知治は両親とも死に別れ、比較的大きな家に一人住まいであった。兄弟のように育った従兄弟の碧という唯一の肉親がいたが、碧は大学を出ると一人住まいをしていた。
ある日の午後のこと、知治が家の前庭で倒れているのが見つかった。庭仕事をする格好で、ポケットには軍手と千円札が二枚入っていた。
そして手には封を開けた白い封筒。死因は心臓発作で、発見後すぐに医師が呼ばれたが、すでに死亡していた。さて、問題は知治の持っている封筒だった。脅迫状だったのだ。
最近、この周辺ではちこちに脅迫状が配られて、警察も捜査していた。脅迫状は同じ便箋、同じ封筒、2つの全国版の週刊誌から切り抜いた活字で作られており、同一犯の仕業と考えられた。
知治が握っていたのもその脅迫状で、50万円を要求されていた。警察では日頃から心臓が弱かった知治が、庭仕事を始めようと庭に出て、ポストから封筒を取り出し、内容を見て心臓発作を起こしたと判断した。しかし碧は違った。脅迫状の贈り主が魔女と噂される美奈ではないかと考えたのだ。

おとぎり草と、背後の闇
8月13日、日曜日、午後11時30分、牧野曜子は白い教会の周囲を巡っていた。手には弟切草を二本持ってひたすら歩く。恋しい男宝田に会えるように祈って。すると少しづつ近づいてくる足跡がし、振り返るとそこに立っていたのは宝田だった。
同日同時刻、友塚小菜絵はマンションの自室でロウソクの灯だけを灯し、林檎をかじりながら歩き回っていた。恋しい男宝田に会えるように祈って。ふと鏡を見ると青白い光が浮び、それが形を成していった。宝田の顔だった。
同日同時刻、小久保真奈美はあるビルの屋上にいた。目の前のファミレスの客の顔がよく見えた。屋上から身を乗り出す。ファミレスの客達も真奈美に気づき始めた。自殺するのではないかと思ったようだ。そのとき背中に手が触れる感触があった。振り返ってみるとそこには宝田が…そして真奈美は転落した。
真奈美は意識不明で病院に運ばれたが、事情を聞かれた宝田は、その時間は自宅にいたと主張した。宝田は同日同時刻4ヶ所に同時に現れたのだった。

夾竹桃の遺言
美奈と奈子にそっくりな女が写った古い写真を手に入れた斎木碧が、その写真を「美奈子」で見せると、美奈は写真の女性の一人は伯母の小菊だという。そして昭和35年に小菊の周囲で起きた不思議な事件を語り始めた。
小菊が病院で知り合った女性の恋人が、胸とひざの裏をナイフで刺されたが、犯人と思われる日傘の女性が現場から消えてしまったというのだ。


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