OZの迷宮

密室、足跡の謎など不可能犯罪を扱った短篇集。
密室の矢
作家坂出厳が別荘の書斎で殺された。凶器は坂出の趣味でも合ったアーチェリーの矢で、血にまみれた矢は半分に折れて室内に落ちていた。更にその側には弓が放り出されていた。
書斎のドアは内側から鍵が掛けられて発見した時もドアは外からハンマーで破らねばならず、窓も内側から錠が掛けられていた。
別荘には息子の良希のほか全部で5人の人間がいて、動機はそれぞれにありそうだが機会はないように見えた…

逆密室の夕べ
スイミング・スポーツ・クラブの4人の共同経営者のうち京西光二という男が兄の京西一也を殺害し、さらに小口四郎を監禁し自分は事故死するという事件を起こした。
事件当時クラブには3人しかおらず、光二は事務室で一也を殺し、小口を殴り倒して用具室に監禁して外から鍵をかけた。やがて小口が用具室で気がついて大きな音を立てたために、隣の更衣室にいた光二が驚いた拍子に滑って、棚に頭を強打して事故死したというのが警察の見解だった。
ちょうど連休にあたっていたために、小口は4日4晩監禁され、その間飲まず喰わずであったが4日後に助け出された。だが事件は解決していなかったのだ。

獅子の城
会社勤めをする傍らで高利貸しを営み、さらに恐喝までしていた犬伏盛也が死体となって川に上がった。心臓を二度に渡って刺された後、重石をつけて川に沈められたらしいが、重石を結んだロープがはずれて浮き上がったらしい。
犬伏は死の直前に行きつけのレストランでボルシチを食べており、解剖の結果胃の中から未消化のボルシチが検出された。犬伏は毎週月曜日にこのレストランでボルシチを食べる習慣であった。
犬伏の会社のガレージから凶器となったナイフが発見され、駐車場のシャッターの鍵を所持していた的場雅人という男が逮捕された。
シャッターの鍵は2つしかなく1つは犬伏の死体のポケットから発見され、今ひとつを雅人が所持していたのだ。だが雅人の兄俊夫は弟の無実を信じて、鍵の密室ともいえる事件の真相究明に乗り出す。

絵の中で溺れた男
ヴァージニア州西部の邸宅で画家マッド・マクレーンが死んだ。邸宅の2階のアトリエに閉じ込められ、そこで溺死したのだった。溺死の原因となった水を分析すると、ほとんどが川の水であった。
邸宅の裏手には川が流れ大雨で増水していたが、マッド・マクレーンが死んだのはアトリエであった。アトリエのドアは指紋認証装置がついていてマッド本人でしか開けられないし、窓は高く普通の梯子では届かない。
アトリエには完成したばかりのマッドの絵があったが、その絵には川とそこで溺れている人間のような姿が描かれていた。マッドは自作の絵の中の川で溺れたのか、それとも川で溺れ死んでからゾンビのようにアトリエに戻ったのか…

わらの密室
ヴァージニア州の地方検事マンフレッド・タガーの邸宅はリッチモンド郊外の高級住宅地にあった。その一室、思い出の品やパーティー用品などを収納しておく部屋がタガー殺害の現場であった。
タガーの死体は腹をナイフでめちゃくちゃに切り裂かれた凄惨なものであった。そして室内には弁護士のベンジャミン・リッグスが頭を殴られて倒れていた。
リッグスによれば邸内を歩いているときにいきなり頭を殴られて気絶し、気づいてみればタガーの死体とともに部屋にいたという。2人のいた部屋は中から鍵がかけられた密室で、窓は二重窓であり内側から錠が掛けられていた。
一つしかない部屋の鍵は室内に落ちていた。つまりタガーの死体と気絶したリッグスは密室で見つかったわけだった。さらにその部屋には一本の藁があった。

イエローカード
札幌郊外の川で発見された死体。殺害された後で川に捨てられたらしく、川の周囲には死体を引きずったような跡が残されていた。死体の身元を示すものは一切残されていなかった。
死体は長靴を履き、手には硬貨を握り締めていた。握り締めていた硬貨は100円玉が2枚、50円玉が1枚、10円玉が5枚であった。さらにポケットからは10円玉が50枚、台所用のラップで不器用に包まれて入っていた。

ケンタウロスの殺人
モンタナ州のタウンゼント家の広大な敷地の中から上半身が人間、下半身が馬という骨が発掘された。もちろんケンタウロスのように一体ではなく、人間と馬の骨が同時に見つかったのだが、不思議なことに人間の下半身と馬の上半身は見つからなかった。骨は3年くらい前のもので、鑑定の結果3年前に失踪したタウンゼント家の当主キースのものとわかった。
そのタウンゼント家に客として滞在していた女性が殺された。前夜に雪が降り5センチほどの積雪の中、女性は裏口に倒れていた。その周囲には馬の足跡と男の足跡があったが、男の足跡は殺人とは関係ないことが判明。
馬の足跡はタウンゼント家の牧場の馬のもので、女性はその馬に蹴り殺されたように見えるのだが…

美羽の足跡
高知県のある施設にいる少女美羽。美羽は友達の家の裏口に放り出されていたウサギのぬいぐるみを盗ったと皆から疑われる。美羽がウサギのぬいぐるみをいじったのは事実だが、裏口に戻したし盗んでもいなかった。だが、裏口には美羽の足跡しかなかったし、ウサギが消えたのもまた事実だった。


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