殺意は幽霊館から

海沿いの温泉地にやってきた天地龍之介とそのいとこの天地光章、長代一美の3人は、ホテルの近くにある幽霊館に出かけた。
そこはかつては観光物産館や倉庫に利用されていたが、今では廃墟になっていて地元では幽霊が出るとの噂がしきりであり、それが幽霊館の由来であった。
幽霊館に向かっていると、その近くにある観光用の電光看板が壊れて、青い光だけを妙滅させているのが無気味であった。
1秒間隔くらいで妙滅する青い光の背後には幽霊館の廃墟のような建物が夜闇にうっすらと浮かんでいた。すると幽霊館の壁に沿って浮遊する男とも女ともつかない影が見えた。
浮遊霊のようなその姿に3人は驚愕したが、のちに判ったことだがその姿は他の複数の人間にも目撃されていた。その浮遊霊はすぐに見えなくなった。3人は気を取り直して意を決し幽霊館に入って行った。
幽霊館には既に肝試しと称して小学校の先生と教え子たち数人が入っていた。彼らが2階に上がった時に龍之介一行が入ってきたのだった。一同は打ち揃って2階に上がり、さらに光章と一美の2人が3階に上がった。
光章と一美が3階に上がったときに窓枠に女が腰かけている姿がぼうっと見えた。2人が驚いていると窓枠の女が後ろに下がり窓から飛び降りた。あわてて駆けつける2人だが、女の姿はどこにもなかった。
文字どおりどこにもなく、地上にもその姿はなかったのだ。窓から飛び降りた女は空中に消えてしまったとしか思えなかった。これがその晩の幽霊館での不思議な出来事だった。
翌朝、ホテルのそばの細道で脱輪して立ち往生している一台の車が見つかった。運転者の姿はなく、車は近くで盗まれたものだった。そしてその車のトランクから見つかったのは女の死体。その女は昨夜、幽霊館で空中に消えた女であった。

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