殺意は砂糖の右側に

小笠原諸島の小島から東京に出てきたIQ190の天才天地龍之介が探偵役として活躍する連作ミステリ。龍之介は小島で一緒に研究していた祖父が死亡し、祖父の旧知の中畑博士を尋ねるために出てきたが、何せのんびりした島の暮らしが染み付いていて行動はピンボケ。さらに中畑博士はフィリピンに遺骨収集のたびに出てしまい、とりあえず従兄弟の天地光章のところに転がり込んだが、不思議な事件に次々巻き込まれて…

第1章エデンは月の裏側に…建物の屋上でもみ合う2人の男が目撃された。直後に1人がもう1人を突き飛ばし、はずみで突き飛ばされた男が、低い手すりを越えて下の池に落下した。池にはすぐに人が駆けつけたが、池に浮んだ男の背中にはアーチェリーの矢が深々と刺さっていた。

第2章殺意は砂糖の右側に…クッキングスタジオでコーヒーで一息入れた人達。コーヒーメーカーからコーヒーが注がれ御菓子を食べて、暫くすると別の組に人と交代。次の組もコーヒーを飲み始めたが、一人はコーヒーを吐き出し、もう1人は暫くして倒れ、そのまま絶命した。吐き出したコーヒーからは酢が検出され、死んだ人間が飲んだコーヒーから青酸が検出された。同じコーヒーメーカーから注ぎ、同じ砂糖を使ったのになぜ一人は酢入りコーヒーを飲み、もう一人は青酸入りコーヒーを飲むことになったのか…

第3章凶器は死角の奥底に…ナイトクラブの社長から懸賞で当てたフィリピン行きの航空券を貰いににやって来た龍之介と光章の2人。社長から呼びつけておいて、暫く店で待ってくれと言う。
店内で女の子相手に飲んでいたが、いつまでたっても社長は姿を見せず、さすがにおかしいと感じたフロアマネージャーとともに、店内の社長室へ向かった。社長室に入ってみると、そこには頭を鈍器で殴られて殺されたらしい社長の死体が。
しかし凶器らしいものはどこにもなく、社長の手の中からは50円玉と1円玉が1枚づつ出てきた。そういえば社長は10円玉を1枚しきりに手に入れたがっていたが、いったい何が社長を硬貨に執着させたのか…

第4章銀河はコップの内側に…フィリピンへの航空券を手に入れ、飛行機の乗り込んだ龍之介と光章。だが飛行機の中でも殺人事件の遭遇した。まず2人の近くに座っていたツアー客の女が、手荷物で持ち込んだ鞄がないと騒ぎ出した。
鞄はブランド品で手回り品のほかにセールスに使う文房具の見本が入っているという。そんな騒動の中、飛行機に弱い龍之介が光章の助けを借りて洗面所へ。
ところが洗面所のドアを開けた途端、目に入ったのは女の死体とシンクに飛び散った真っ赤な血の跡。女はすでに絶命していたが出血量は少なく、調べてみるとシンクの血と思われたのは赤インクであった。
しかも洗面所の中からツアー客の女が盗まれたと騒いでいたバックが見つかった。犯人は女のバックの中の見本の赤いサインペンを使って、シンクに赤インクをぶちまけたらしい…

第5章夕日はマラッカの海原に…フィリピンに着いた龍之介と光章はレンタカーで走っている途中に水牛を避け損ねて、道路わきの現地人の神様とされる装飾された木のポールに衝突してしまう。
たちまち現地人に囲まれて連れ去られ、光章は拳銃を渡されて人形を撃つように命じられた。撃たなければ殺されそうな雰囲気に、勇気を振り絞って生まれて初めて拳銃を撃つ光章。
ところがその瞬間、少しはなれた椅子に座っていた男の眉間が弾け飛び、男は椅子ごとドッーと倒れこんだ。のちに男の体からは銃弾が発見されたらしいが、不思議なことに光章の撃った弾は人形を貫通すらしていなかった。弾は人形を乗り越えて男の眉間に撃ち込まれたとしか思えなかった。

第6章ダイヤモンドは永遠に…龍之介と光章がフィリピンに来ている間、日本ではダイヤ消失事件が発生していた。ホテルの部屋に逃げ込んだダイヤの密輸犯は、他人の部屋への無断侵入で逮捕されたが、身につけているはずのダイヤは徹底的な捜索にもかかわらず、密輸犯の体からも部屋の中からもでてこなかった。密輸犯の逃げ込んだホテルの部屋を借りていたのは光章の恋人一美の兄。そのことを国際電話で知った光章と龍之介は…

第7章あかずの扉は潮風の中に…フィリピンで遺骨収集をしていた男が使っていた洞窟。その扉の鍵を持つのは2人だけ。だが2人が扉を開けたわけでもないのに、中に誰かが侵入した跡が歴然としていた。鍵を持つ1人は龍之介たちが訪ねた中畑博士で、博士は日本に帰ったはずだったが、このことから まだフィリピンに留まっているのではとの噂が流れ…
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