ifの迷宮

遺伝子治療や体細胞移植といった最先端医療を手がけるSOMONグループの中心は、宗門清周を中心とする宗門一族であった。宗門家は明治から昭和にかけて宮内省にも関係した名門で、戦後は別宅であった山梨に移り住んでいた。
その宗門家で顔を暖炉に突っ込まれて、おまけに手足まで焼かれた他殺死体が見つかった。死体は宗門亞美のもので、亞美は清周の妹の孫娘であった。
亞美の死は、2年ほど前に静岡で起きた串川兵吉殺人事件を連想させた。串川も殺された後に、自宅の囲炉裏に顔を突っ込まれて焼かれていたのだ。亞美の事件と全く同じであった。
しかも串川殺しの犯人と思われる池澤祐児も死体となっているのが目撃されているが、その死体が消えてしまっていた。池澤が生きて車のトランクに入ったのは目撃者がいて確かだった。
その直後に池澤が忍び込んだ車が走り出し、その車のトランクが開けられて時には池澤は血まみれの死体となっていた。運転者はびっくりして、警察に電話をしにいった。そして戻ってみると死体は消えていたのだ。
運転者が電話をかけたのは、ほんのわずかの時間であったし、トランクの中には夥しい血が残されており、死亡しているのは明らかだった。しかもDNA鑑定から死体の主は池澤で間違いなかった。
その池澤の死体は、その後どこからも出てこなかったが、亞美のDNAを調べた結果、池澤のものとまったく同じ配列をしていた。つまり池澤と亞美は同一のDNAを持っていたのだ。池澤と亞美はどこでどう繋がっているのだろうか…

宗門亞美殺人事件も池澤の死もまったく解明されない状態で、宗門家の土地で土石流が発生し、SOMONグループが作った研究所が飲み込まれてしまう。
奇跡的に土石流による死者は一人もでなかったが、研究所の職員用リラクゼーションルームでナイフを刺された宗門静香の他殺死体が見つかった。
静香も清周の妹の孫娘で、亞美とは従姉妹であった。静香が死んでいたリラクゼーションルームは外から鍵が掛けられていて、その鍵は部屋の中にあった。
しかもドアの外には土石流が押し寄せていて、その土石流に柱が流されてドアを塞ぎ、物理的にドアは開けられない状態であった。現に死体が発見されたのも、土石流が取り除かれ、柱を避けて外からドアをカッターで切り開いたからであった。
検視の結果、静香が殺されたのは土石流が発生した後であることは間違いない。犯人は鍵と土石流の二重の密室から脱出したのか…
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