3000年の密室

1997年第8回鮎川哲也賞応募作品で、受賞は逸したものの翌年に刊行された柄刀一のデビュー長篇。

長野県で発見された縄文人と見られるミイラ。サイモンと名付けられたそのミイラは、洞窟の奥で冷凍状態で横たわっていたが、洞窟の開口部は内側から石が積まれて塞がれていた。
ミイラは背後から石斧によって刺殺されたとしか思えず、その右腕は死後の切断された形跡があった。しかも右腕は洞窟内からは発見されなかった。
背中を刺されたサイモンが洞窟に逃げ込んだとしても、内側から石を積んで洞窟を密室にすることは至難の業であるし、例えそれができたとしても犯人はその後密室となった洞窟に出入りして、サイモンの右腕を持ち去ったことになる。
縄文時代の密室殺人事件が現代に甦ったのだった。

ともあれサイモンの発見は考古学史上最大級のものであることは間違いなく、サイモンは長野歴史人類学研究所に持ち込まれて解剖された。
そのサイモンを発見したのは最近開校されたNJユニバーシティ理学部管財課長の館川民夫であった。館川は市井の考古学研究者で、石碑の研究をしていた。
長野の山中に石碑の研究の一環として入山し、サイモンのいる洞窟を偶然に発見、一躍時の人となった。ところがサイモンの解剖が進み、その成果が発表される頃に館川が行方不明になった。
やがて館川の首吊死体が長野の山中で発見された。館川の周辺にはサイモンの発見によってもたらされる経済効果をあてにして、役人や政治家、金の亡者が群がり始めていたらしいが…

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