首なし人魚伝説殺人事件

警視庁の刑事である敷島竜二は大学時代の同級生笠間修に頼まれて、夏の休暇を瀬戸内海に浮かぶ流島で過ごすことになった。笠間は流島の出身で、この島で45年前の終戦直後に起きた殺人事件の再捜査を個人的に頼んできたのだ。
45年前の事件とは、島の実力者海藤家と火影家の長男が2人とも首を切られ、海藤の首はボートに乗せられて海を漂い、火影の首は炭焼き小屋で焼かれ、さらに2人の胴体は持ち去られて行方不明となるという猟奇的な事件であった。
この事件の犯人とされたのが笠間の祖父であった。笠間の祖父は事件直後から行方がわからず、現在も行方が知れなかった。
残された笠間一家は狭い島の中で肩身の狭い思いをし、笠間も子供のころからいじめられたが、笠間自身は絶対に祖父が犯人ではないと信じ、刑事である敷島に再捜査を頼んだのだった。
流島に渡るにはいったん松山に入り、そこから定期船で渡るのが一般的だった。敷島は笠間と松山空港で待ち合わせ、その後島に渡ることにしたが、時間的に定期船は終了しているので、笠間の友人で島出身の元漁師で今は松山に住んでいる海藤憂一に船を出してもらうことにしていた。
海藤が最終の定期船で島に渡り、島から船を借り出して送ってくれる段取りになっていた。敷島は笠間に案内されて、すでに島に入っている海藤のアパートで待機した。

するとそこに電話が架かって来た。笠間は当然のように電話を取ったが、すぐに顔色を変えた。やはり流島出身で松山に住んでいる火影琉璃が身の危険を感じ助けを求めているというのだ。
笠間は敷島に留守を頼んで瑠璃のマンションに駆け付けた。笠間が瑠璃の部屋に入ると血だまりの中に瑠璃が瀕死の状態で倒れていたが、まだ息があった。
笠間は救急車を呼ぼうとしたが部屋の電話線が切られており、マンションの1階にある喫茶店に向った。ところがそこの公衆電話は故障中。仕方なく少し離れた公衆電話から救急車を手配した。
そして瑠璃の部屋に戻ってみると、血の跡はあるものの瑠璃の姿は消えていた。同じころ流島でも事件が起きていた。島の海岸に漂う古いボートの中に女の胴体にマネキンの首を乗せたものが浮いていた。
首はマネキンだが胴体は人間のものだった。発見したのは痴話喧嘩中のアベックで、男は事件を警察に報せるために気を失った女を砂浜に横たえて電話に走った。
男が戻ってみるとマネキンの首は髑髏に代わり、気を失っていた女は海で溺れ死んでいた。やがて警察が乗り込んできて首のない死体を調べてみると、服や体の特徴からその死体は火影瑠璃のものと判明した。松山で瀕死の重傷を負った瑠璃は、ほぼ同じ時刻に首なし死体となって流島に帰ったのだった。
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