からくり人形は五度笑う

人形の村といわれるY県沙華姿村。ローカル鉄道に乗って、さらにその駅から一山越えたところにあるその村は、交通の便もなく人口も少なく、寂れた里だった。
かつて、その村には仁内忠雄と秀雄という双子の人形作りがいたが、秀雄が商業主義に走ったために職人気質の忠雄と仲違いし、その後忠雄も秀雄も相次いで亡くなって職人たちも四散し、今のように寂れてしまった。
沙華姿村は山の斜面に沿って広がり、集落は全体が南に向かって坂になっていた。その中央を小川が流れ、最南部で二股に分かれていた。その分かれた先に水車があり、最北部には火の見櫓がある。
火の見櫓に上ると眼下には集落がパノラマのように広がった。川の中ほどには狭い木橋が掛っている。木橋というと聞こえはいいが、50センチ程度の幅の1枚板を渡しただけである。
その木橋の両側に等距離を置いて秀雄の旧宅と忠雄の家が建っていた。両方ともそっくりの作りで、どちらも斜面に建てられているので、正面に建つと3階だが、階段状に回数が減り裏に回ると平屋と同じであった。
秀雄の家には南西に蔵があり、忠雄の家ではそこに人形館が建っていた。27年前に忠雄の妻が忠雄のもとを逃げ出し、秀雄と再婚するという事件があった。
その祝言の翌朝、秀雄の妻になったばかりの女は首を切られて殺された。それが2月のことで、その後忠雄が焼死し、さらに秀雄も殺された。秀雄も首を切られ、胴体は火の見櫓に首は水車のそばの道端に転がっていた。
1年の間に3人もの人間が死んだのである。さらに満月の夜に白い衣を来た小人が走り回ったり、赤い着物を着た人形が空を飛んだりと不気味なことが立て続けに起きた。

27年後、依井直之のもとに行方不明の父からセピア色に変色した一通の葉書が届く。父は沙華姿に滞在していて、てまりうたとして正月沙華姿花の市、三月沙華姿灰の市、六月渡る橋がない、八月井戸の水も涸る、十月哀しや逆の市と書かれていた。
おそらく書かれたのは20年以上前であったが、葉書には今の郵便料金の切手が貼られており、今ごろになって何者かが葉書を投函したものと考えられらた。
依井直之は居ても立ってもいられず沙華姿に向かって東京を旅立った。そして沙華姿村唯一の旅館水車に入る。水車は忠雄の旧宅をその娘静が継いで旅館を営んでいた。
小川を挟んで反対側に建つ秀雄の旧宅は現在廃屋になっていた。その沙華姿で依井直之は父の手がかりを探ろうとし、27年前の不気味な事件を知る。
依井直之は友人の探偵一尺屋遥に応援を頼むが、その直後に何者かに殺されてしまう。しかも水車に逆さに磔にされて…
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