樹霊

北海道日高地方にある古冠(ふるかっぷ)村では、アイヌの生活と文化を知るためのテーマパーク「神の森ワンダーランド」の建設が計画された。公共事業に頼らざる負えない村では建設推進派と自然破壊だとする反対派が争った。
村を改革しようとする若手村長と役場の若い職員鬼木、それに村に住むアイヌの山澤は反対する立場、一方村の行政を牛耳る助役の私市康男とその弟で建設業者私市組社長の私市貴男、それに多くの役場職員や村議たちは推進派であった。
結局、当初の計画を大幅に縮小し、開発が始まった。だが反対派は、アイヌの自治を進める土谷道議と弁護士の吉兼を巻き込んで、反対運動を続けていた。北海道の巨木の写真を撮り続ける写真家猫田夏海が、古冠村にやって来たのはそんな状況の時だった。
実は猫田が来る数日前から古冠村では奇怪な現象が起きていた。街路樹として村を貫く道に植えられたナナカマドの木が、一夜にして移動していていたのだ。何者かが重機で移動させたらしい。それも複数回移動していた。
さらに夏海の目的であった巨木のミズナラで、神の森の長老の意であるエカシが、土砂崩れにあって、数十メートル移動していた。まさにエカシらしく、倒れることもなく平行移動したのである。
そして夏海がやって来て間もなく、事件が立て続けに起きた土谷道議が行方不明になり、さらにナナカマドが3回目の異動で、今度移動したナナカマドは私市貴男の家の庭に植わっていたものだった。
この後も土砂崩れが再発し、エカシが建設会社の社員の首を切り、そのまま平行移動したり、墜落死した鬼木の死体が役場の裏庭で見つかったりと事件が続き、夏海は先輩の鳶山に助けを求めた。
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