龍の館の秘密

密室ものの長編「龍の館の秘密」に未発表短編「善人だらけの街」を併載。
龍の館の秘密
一日立っているだけで2万円というバイト料につられて、女子高生の倉西美波はアジア留学生を支援する会の東京支部でアルバイトをすることになった。バイトの内容は駅での托鉢で、編み笠で顔や頭を隠し、お経はテープというインチキ僧だが、その托鉢料が会の運営と留学生の支援に使われるという。
しかも今は東京でのリサーチ期間だから、托鉢された金は全額美波のものになるという。この条件に喜んだのもつかの間、暑い中立ちっぱなしだし、汗を吹くこともできない。しかも美波以外の支援を受ける留学生たちの場合は、托鉢を受けた金額の8割が会の維持費名目でピンハネされるという。
この事実を知った美波は東京支部長の土師田に抗議すると、土師田はピンハネ率を6割に引き下げた。美波が財閥の西園寺家の娘かのこと同級生であり親友であることを知った土師田が、態度を豹変させたのだ。どうも支援する会は、西園寺財閥から財政面で大きな支援を受けているらしい。
そんなわけで美波は留学生から英雄視され、土師田も参加した宴会で主賓となり、その席で誤って酒を飲んで寝込んでしまう。美波が気がつくと、京都駅前を車で走っていた。運転手は中国からの留学生陳、土師田も同乗していた。これから京都の鞍馬山の奥にある、会の本部に行くのだという。
昨夜酔った美波が勢いで京都に連れて行けとわめいたために、今ここにいるらしい。やがて車は会の本部になっている屋敷へ着いた。そこは海外では有名な抽象画家だった佐伯龍之介画伯の屋敷で、会も画伯が設立したものだという。画伯が去年他界したあとは、画伯の一人息子の淳二が運営を引き継いでいるという。
その広大な屋敷に着いたとき、親友のかのこもやって来た。かのこは佐伯家とも知り合いで、淳二に招待されたのだという。思いがけない再会に美波は喜び、かのこともに屋敷に滞在することになった。佐伯の屋敷は広大な敷地の中に洋館が立てられ、画伯の考案したからくりがあちこちに仕掛けられていた。
龍の館と呼ばれ、庭の池には龍の彫刻が3体あった。その龍の館の池で、その日の夜、土師田が殺されるという事件が起きた。

善人だらけの街
ある事情から塗り薬の臨床治験のアルバイトをすることになった倉西美波。指定された時間に指定されたクリニックに行くと、治験薬を塗られて写真を撮られ、病室に案内された。病室は痩せこけた50歳くらいの竹井という女と、ものすごく太った熊倉という女が一緒。寝る前に薬を与えられ、そのままベッドに入ったが、夜中に看護師の声で叩き起こされた。
隣の電器屋が火事で、すぐに批難しろというのだ。ところが美波はものすごくハイな気分で、クリニックを出ても町の人たちは皆善人で美波のことを心配してくれるのだった。


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