銀の檻を溶かして

第11回メフィスト賞受賞作で、薬屋探偵妖綺談シリーズの第1作でもある。このシリーズは秋、ザギ、リベザルの3人の妖怪が主人公。
妖怪たちは人間に化けて生活し、ふだんはどんな薬でも調合しますと札をかけた逸らない薬局を経営し、その裏では妖怪がらみの事件や不可解な事件を扱う探偵業をしているのだった。
探偵業は積極的に宣伝しているわけではないから、噂や紹介で事件が持ち込まれ、リーダー格の秋が気に入らなければどんな事件であろうと引き受けない。

その日やってきた依頼人は栃木県の不動産屋の営業マン市橋で、偶然悪魔を呼び出してしまい、願い事をかなえてもらう契約をしてしまったと言う。
願い事とは今やっている仕事が上手く行きますようにというものだった。不動産屋の社長がマンションを建てるために土地を買収しているのだが、意見だけ買収に応じない家がある。
その家は母子家庭で呉服屋をやっており、その母親に社長は惚れてしまった。呉服屋を立退かせて路頭に迷った母親に近づき結婚するというのが社長の作戦で、市橋に呉服屋を立退かせるように命じてきたが、呉服屋の方も絶対に立退かないと頑張っていた。
市橋も呉服屋が社長と結婚するなどあまりにも理不尽と思っていたので、社長と呉服屋の間で板ばさみになっていて、なんとか円満に解決するよう願い悪魔と契約したというのだ。
だが契約成立後の成功報酬が市橋の命であることを知り、何とかして欲しいと秋のところに泣きついてきたのだった。話を聞いた秋たちは渋々ながら市橋を助けることにした。

市橋が喜びんで帰った日の翌朝、今度は品のいい女性がやはり依頼に来た。女性は小海由里子と名乗り、息子の幽霊に悩まされているのだという。
由里子の子供のハジメは、行方不明になった後一週間ほどたって学校の校庭で死体で見つかった。学校の校庭には雪が積もっていて、3月3日に朝その雪の上に巨大な雪の妖精が現れた。
雪の妖精とは、雪の上に大の字に倒れた人間が両手足を上下に動かすことで出来る雪上に軌跡のことで、今回のは全長100mはあろうかという巨大なものだった。
その妖精はテレビのニュースでも取り上げられ、新ミステリーサークルとして話題となった。学校側も校庭を立ち入り禁止にして雪が溶けるまで保存することにした。
ハジメは雪が溶け出して暫くしてミステリーサークルの中で死んでいた、死後約5日たち体には無数の傷跡があった。だが、ハジメの死体の周囲の雪には一切の足跡がなかったのだ。
そして小海由里子とハジメの家こそ、市橋が持ち込んできた呉服屋であったのだった…
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