QED 熊野の残照

他人と付き合うことが苦痛で孤独を好む神山禮子。禮子が薬学部を出て薬剤師となったのも、なるべく人と接しなくてよい職業をとの思いからだった。本当は病院の薬局に勤めたかったが、病院の薬局は欠員が出ない限り募集をかけないので、仕方なく調剤薬局に勤めている。
その禮子が地区の学校薬剤師協会の親睦旅行に参加することになった。これまで親睦と名のつくものには一切背を向けて来た禮子にとっては驚くべきことで、薬局長をはじめ周囲の人々は驚いた。禮子が参加する理由は、1泊2日の旅行の行先が熊野であったからだった。
禮子には皆に隠している過去があって、皆は秩父出身だと思っているが、本当の故郷は熊野であった。ある出来事があって故郷を捨てたのだ。だから本当は心の中では故郷と思っていないが、やはり熊野と聞くと心が動いたのだった。
一行は12名、その中には棚旗奈々と桑原崇の2人がいた。禮子は比較的年齢の近い奈々と旅行中行動を共にすることにした。奈々のいうことには、崇は寺社めぐりが大好きで、歴史に造詣が深く、普段参加しない親睦旅行に珍しく参加したのも、何か熊野に関することで確かめたいことがあるらしい。
しかも熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の熊野三山の参拝順序にも拘り、今回の旅程を変更させたともいう。禮子は熊野出身であることを秘しつつ、常に奈々と崇と行動をしたが…
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