QED 百人一首の呪

博識の薬剤師桑原崇が謎を解く、高田崇史のQEDシリーズの初作で、第9回メフィスト賞受賞作。

東京都心の一等地に広壮な屋敷を構える貿易会社社長真榊大陸は、ワンマン社長であり、相当悪どいことをやって現在の地位を築いた。早くに妻和子を亡くしたが、妻の生前から家庭など顧みない男であった。
その証拠に妻が死去すると、2人の息子と1人の養女を家から追い出して、20Kmほど離れたところに別々にマンションを買い与えて住まわせた。
これは2人の秘書も同様で、やはり20kmほど離れた場所にマンションを買い与えられて住まわされた。子供たちや秘書が、いくら懇願しても絶対に引越しは許されなかった。
そして自身は都心の家を改築して、身体障害者の長女と一緒に住んだ。そのほか都心の家に出入りするのは、20年来の通いのお手伝いだけであった。

大陸は普段子供たちが家に近づくのは好まなかったが、正月だけは子供たちを家に呼び寄せ、2人の秘書も加えて、7人で過ごした。しかし、それは団欒と呼ぶには程遠く、ただ同じ屋根の下に7人がいるというだけであった。
総じて金には細かく、吝嗇であった大陸だったが、唯一の趣味の百人一首のカルタのコレクションには金に糸目はつけなかった。部屋といい廊下といい階段といい、屋敷中に百人一首のカルタのコレクションが飾りつけられていた。
その異様な雰囲気の屋敷で、大陸は何者かに花瓶で頭を殴られて殺された。犯行場所は自室、手には1枚の百人一首の札を握りしめていた。
外部からの侵入は不可能で、犯人は内部にいた4人の子供と2人の秘書、それにお手伝いの合わせて7人の中にいると考えられたが、全員物理的に犯行が不可能とわかった。
この事件を友人のジャーナリスト小松崎に聞いた薬剤師桑原崇通称タタルと学生時代の友人の棚旗奈々。タタルは百人一首の謎を追い始める。

殺人事件の謎よりも百人一首に秘められた謎をタタルが仮説を立てて解いていくほうが断然面白く、仮説の域を出ないまでも、よくぞここまでというくらいの謎解きになっています。
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