黒い仏

無名の探偵石動戯作は、大生部暁彦から深夜呼び出しを受けた。大生部暁彦はベンチャー企業のオーナーであり、成功者の一人で金はうなるほど持っていた。
大生部暁彦が石動のような無名の探偵に会うのは、知る人ぞ知る石動の過去の実績を聞き及んで、ある依頼をするためであった。
その依頼とは九州北部、福岡市の隣町にある安蘭寺という寺に隠されているという円載の秘宝を探し出すことだった。
円載は中国の唐王朝に留学をし、その帰路に船が難破して死んだ僧で、その円載が日本に持ち帰ろうとした秘宝が流れ着いて安蘭寺に隠されているのは間違いないという。
ただし、その秘宝が何で、どこにどういう形で隠されているかはまったく謎であった。自身では名探偵だと思っている石動は、その話を聞いて二つ返事で引き受け、助手のアントニオを連れて福岡に飛んだ。
安蘭寺のある阿久浜の街は人気がなく、安蘭寺も荒れ果てた寺であった。そして寺の本尊黒智爾観世音菩薩は、時代がかった黒々とした仏像であったが、その首は切られていた。
石動とアントニオは阿久浜のうらぶれた旅館に腰を落ち着けて、安蘭寺に通いづめ、寺の保管されている古文書を見ながら円載の秘宝を探すことになった。

一方、これより少し前に福岡市内のボロアパートの一室で男の死体が発見された。榊原隆一と名乗る男は、不法滞在者などいい加減な人間が多いこのアパートでは、唯一まともな人間であった。
その男が部屋の中で首を絞められて殺されていたのだ。不思議なことに部屋の中は指紋が一切検出されなかった、きれいに拭き取られていたのだ。
そして榊原隆一も偽名であるらしく、被害者の男の素性は一切わからなかった。事件の捜査を担当する中村、今田両刑事は被害者の身元を特定すべく足を棒にして歩きまわるのだが…

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