双孔堂の殺人

東京からも近いのに人口が減少しているY湖畔に奇妙な建物があった。もともと美術館にする予定だったが計画が頓挫し、建物だけが残った。鍵のような形で、持ち手が八角形、その中央には大きな穴があり、ブレードはまるで湖が鍵穴であるかのように長く突き出て、先端は湖水に没していた。それが二枚重なっていて一層目と二層目は多くの柱で結ばれていた。
造られた当時は双孔堂と言われたが、何も使われないまま廃墟となっていたのが伝説の数学者降脇一郎に買い取られ、ダブル・トーラスと名付けられた。ある夜、そこに5人の男女が集まった。世界的な数学者鰐山豊とその妻明媚、同じく数学者の平国彦とその助手鳥居美香、放浪の数学者十和田只人である。
鰐山夫妻は 降脇一郎から正式に招待を受けていたが、ほかの3人は違った。十和田は世界中を放浪しては目ぼしい研究者のところに押しかけて共同研究をしていて、たまたまこの夜 降脇一郎を訪ねた。また平は鰐山のライバルで、鰐山が招待されたことを聞きつけ、助手を半ば脅して誘い強引に押しかけたのだ。ほかには飯手と立林という2人の使用人がいた。
そして事件が起きた。中から閂を掛けられた密室の中で、 降脇一郎と鰐山豊が拳銃で射殺された。 降脇は一層目の書斎で後頭部を撃たれ、鰐山は二層目の自室で額を撃たれていた。そして書斎の中には十和田が、凶器の拳銃を握って気絶していた。
十和田は記憶がなかったが、犯人は自分しかいないと進んで自白していた。こんなときにダブル・トーラスにやって来たのが、警察庁刑事局のエリート官僚宮司司である。宮司は妹の依頼で十和田を訪ねてきたのだ。そして否応なく事件に巻き込まれることになった。
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