龍神池の殺人

角川春樹事務所書籍編集部の原田智子のもとに、長野県戸隠村にある龍神精神病院の医師龍神周二から電話があった。その電話で周二は 宮崎勤事件には異論があり、裁判では真相はまったく明らかにされていない、できれば犯罪者プリファイーラーである弥生原公彦に自分の意見を聞いてもらいたい、と激越な調子で語ったそうだ。
原田智子はさっそく担当している探偵小説家の築島龍一を通じて弥生原公彦に話を持ち込んだ。なんでも龍神一族は、龍神伝説にまつわる過去を持ち、付近では有数の資産家であるとともに、過去にも龍神にまつわる殺人事件に関与している一族だという話だった。興味をひかれた弥生原公彦と築島龍一は、龍一の婚約者で弁護士の田村典子を誘って、3人で戸隠村の龍神病院へ向った。
過去の龍神にまつわる事件とは、先代の龍神病院長の龍神種人の愛人で、旅館経営の傍ら高利貸しをしていた村山コウが、借金返済を巡って尾形静馬と口論、静馬がコウを絞め殺してしまった。ちょうどその現場に種人が現れた。
コウの死体を見た種人は逆上し、仕込杖から日本刀を抜いて尾形静馬の左腕を斬り落とた。静馬は現場から車で逃走し、龍神窟という洞窟へ血だらけのまま逃げ込み、そのまま行方不明になったというものだった。

やがて種人も死去し、いまでは種人の長男徹吉が院長となっていたが、龍神病院の忌まわしい過去を伝えるこの事件は、いまだに尾を引いていた。というのは弥生原たちが病院へ着くと、つい先ほど尾形静馬と名乗る片腕の男が病院を訪ねてきたというのだ。
その男は取り敢えず応接室に案内されたが、いつの間にか応接室から消えてしまったというのだ。応接室は男自身の手で内鍵が掛けられ、窓の中から施錠されていた。男は密室から消えたのだった。
のちに応接室には秘密の抜け穴があることが分かるが、この抜け穴の存在は限られた者しか知らず、しかもその開け方は簡単にはわからなかった。つまり抜け穴があったとしても、密室であることに変わりはないのと同じだった。
この事件がきっかけとなったかのように、さらに事件が続発する。池に飛び込んだ周二が、そのまま池の中から消失してしまったり、密室だったはずの建物から周二の妹の桃子が消え、屋根に叩きつけられた状態で死体となって見つかったりと、いずれも不可解極まりない状況での事件だった。
しかもいずれの場合にも関係者全員にアリバイがあったのだ。目の前で立て続けに起きる事件に、名探偵弥生原公彦は…

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