悪霊館の殺人

芦屋に本宅を持つ資産家の小此木一族は、製薬会社のオーナーだが複雑な家庭事情があった。小此木製薬会長であり筆頭株主でもある小此木淑江が、小此木家の唯一の正嫡であり、その夫で小此木製薬社長の政人は入り婿であった。
二人の間には俊一という長男がいたが、俊一は2年前の高校3年の時に雪山で遭難し生死不明であった。虚弱であった淑江は俊一を生んだのち、子供ができない体になっていて、俊一行方不明の報に淑江は精神的なショックを受けた。
その淑江が頼ったのは太陽神霊教という新興宗教で、今では狂信的な信者で、小此木家には太陽神霊教主泉佳代や幹部の武藤大弐らが大手をふって出入りしていた。政人はこの様子を苦々しく思ってみていた。
一方で政人も暗い過去を背負っていた。政人の父は大学教授で、政人が幼児の時に母親が陵辱された上に殺された。その夜は父の教授は留守で、母と祖母と政人が並んで寝ていたが、忍び込んだ男に政人の母が殺されたのだ。
犯人は逮捕されたが冤罪を主張し、先ごろ真犯人が名乗り出て犯人とされて逮捕された男は無罪となった。
この小此木家にはほかに政人の第二夫人、所謂妾が同居していた。子供を生めなくなった淑江の公認であり、名を久磁恵美子といった。
恵美子と政人の間には美保という娘がいたが、美保は離人病という精神疾患に罹っていた。
さらに淑江の腹違いの弟の瀬戸川一馬、淑江の乳母細川鶴、政人の秘書津島修二、美保の家庭教師羽鳥早苗、淑江の付き添い看護婦秋山世津子らが同居していたが、いずれも一癖ありそうな人物ばかりだった。

その小此木家にハンチングを被りサングラスをし白マスクをつけた男が現れる。
男は飛鳥征太朗と名乗り、小此木家の先代龍蔵の親友の息子で、ロスアンジェルスで実業家となっていたが、暴動にあい大火傷を負って帰国し小此木家に援助を求めてきていた。
顔は火傷で醜く変り、サングラスやマスクはその顔を人目に晒さないためといい、暴動で事業を投げ出さざるを得なかったと語った。政人は飛鳥を見るとなぜか脅えた表情になり、飛鳥を邸内に置いた。
そして、このころから小此木家に不可思議な事件が起こる。まず邸内で行方不明のはずの俊一の姿が数回目撃された。淑江が脅え一家は南紀那智勝浦の別荘に向かう。すると別荘内にある塔からマネキンが首吊りのされていた。
そしてついに淑江が白マスクの男に絞殺される。絞殺現場は目撃され、すぐに白マスクの男の追跡が開始されるが男は塔に逃げ込む。そして塔内にガソリンを撒き大爆発を起こして自爆死した。
ところが事件はこれに留まらず、芦屋に戻った一家を襲う。次には政人の秘書の津島修二が失踪し、恵美子が殺された。その恵美子の死体を始末しようとしていたのは失踪した津島修二で、死体遺棄を放り出して逃げ出し再び行方を晦ました。
一方、その間太陽神霊本部でも殺人事件が起き、幹部の武藤大弐が殺され部屋中に白ペンキが撒かれていた。相変わらず事件の周囲には白マスクの男が徘徊する。
白マスクの男は南紀で自爆したのかどうかもわからないし、男が飛鳥なのかどうかもわからない。飛鳥征太朗は南紀に行く前に美保を襲い、駆けつけた政人から追い出されていたのだった。
複雑に絡み合い錯綜する事件に、政人が頼みとする探偵であり、若き精神医学者弥生原公彦も翻弄され続ける。

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