蝶たちの迷宮

篠田秀幸のデビュー作で、悪評も多い作品。10年に一度の大愚作という人もいるという。冒頭に宣言一つと題する章があって、そこには「この事件の犯人は、探偵である。またそれは、証人でもあり、同時に被害者でもある。のみならず犯人は、この小説の作者でもあり読者でもある」と書かれ、これは読み進むうちにも繰り返し記されている。
これについて最後の最後に書かれているのだが、その内容は小説ではなく説明になってしまっているし、それも正直よく分からない。このあたりが悪評に繋がっているのだろう。

古びたアパートの一室で、元学生運動家で現在は学習塾の人気講師になっている香川京平の死体が発見される。発見者は香川の後輩でとなりの部屋に住む篠田秀幸と篠田の部屋にたまたま泊まった2人の学生。
朝方、香川の部屋からステレオが大音量で鳴り出し、一向に止まる気配がないために、篠田が様子を見に行くと香川の部屋のドアに鍵が掛かっていた。
3人で相談した結果、篠田が大家に鍵を仮に行き、3人で香川の部屋のドアの前に行った。すると中から女の悲鳴が聞こえ、同時に中から閂がかけられた。
篠田たち3人は部屋の周囲を点検したが中の様子はわからず、思い切ってドアを蹴破った。ドアが破られると部屋の中には香川の死体が転がっていたが、悲鳴を上げた女はどこにもいなかった。
警察の調べでは香川が死んだのは10〜12時間前の前夜11時頃で死因は毒殺。死んでから2〜3時間ほどたって、何者かが香川の首をヒモで絞めていた。
ドアは中から閂がかけられ、しかも外からしか掛けられない鍵は部屋の中に落ちていた。つまり現場は二重の意味で密室であった。もちろん窓にも内側から鍵が掛かっていた。

香川と篠田の関係は、先輩と後輩というだけでなく、同人誌「停車場」の顧問と編集長の関係でもあった。篠田の部屋に泊まっていた2人も「停車場」の同人であった。
香川の死から6週間前に「停車場」の同人であった高校生が不可解な死に方をしていた。池田賢一という名の高校生は農薬を飲んで自殺したと報道された。
だが数日後、賢一の父親が警察に出頭し、家庭内暴力に悩み賢一に農薬を飲ませて殺したと自首した。しかし父親は自首したものの、その後は一切黙秘。
香川事件と池田事件は関連があるのだろうか…

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