透明人間の納屋

昭和52年、日本海に臨むF市に住む小学生浦上ヨウイチは、隣で印刷所を経営する真鍋平吉に実の子供のように可愛がられていた。ヨウイチは母子家庭で、母は隣のG市でホステスをしていることもあって、いつしか真鍋の印刷所に入り浸るようになっていた。
真鍋さんは器用で物知りな人でプラモデルを作ったりしていたし、ヨウイチの聞くことになんでも答えてくれた。そして毎日のように夕食を一緒に食べた。いつも不機嫌なヨウイチの母も真鍋さんとのことは何も言わなかった。
その年の夏休み、G市にあるホテルから一人の女が消えた。真由美というその女は真鍋さんの妹みたいな存在で、G市でホステスをしておりヨウイチの母とはライバルの関係にあった。そんなわけで時々真鍋さんの印刷所にもやって来たが、そのたびにヨウイチをいじめた。
そんなとき真鍋さんはヨウイチをかばい、時には真由美に暴力までふるった。その真由美が部屋から消えたのだ。部屋には真由美の婚約者篠崎太一がいたが、太一は寝てしまっていて真由美が消えたことに気づかなかった。
ホテルの部屋は4階で、人が出入りできる窓はなく、よしんば窓から抜け出せてもタイルの外壁を降りることは不可能だった。ではドアからというと、部屋は偶然リネン室で作業中の従業員から監視されている状態で、ホテルの構造上フロントの眼を掠めて外に出ることは不可能だった。
しかも部屋の中には真由美の服や靴が残っていた。つまり真由美は素っ裸で密室から消えてしまったのだった。真鍋に言わせると、この世には宇宙人や透明人間がいるという。真由美は宇宙人なのか、それとも透明人間になったのか
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -