嘘でもいいから殺人事件

やらせの三太郎こと軽石三太郎は、TPSテレビにそのひとありと言われた人物で、看板番組8時スペシャルのディレクターであった。渾名のとおりに三太郎の製作する番組はすべてやらせと言っていいのだが、さすがやらせがすぎて苦情と批判の嵐となってしまった。
社内の重役会でも8時スペシャルは大問題となり、三太郎は起死回生のヒットを飛ばさなければならなくなった。ボクこと隈能美堂巧は、三太郎の下でこき使われるサードADだが、三太郎にマージャンの借金があるために、起死回生の案を出すように強制された。
そこでボクが考えたのが横須賀沖に浮かぶ無人島猿島の取材。猿島は旧日本軍の要塞地帯にあり、戦前は軍事施設だけの島であり、戦後は横須賀港との間に小さな連絡船が行き来するだけの島となっていた。
戦前はこの猿島に、華族であった田村家が住んでいた。戦争が激しくなると猿島を立ち退いたのだが、屋敷はまだ残っていた。そこの所有者である田村高麿はボクの友人でありマージャン仲間であった。その田村の屋敷を借りて、猿島の取材をしようというわけだった。
この企画は三太郎の気に入り、上層部の審査も通過したが、予算はキツキツで、取材陣といっても三太郎とボク、ボクの助手のターボ、西村誠カメラマンとその助手の篠塚の計5名で、別荘には田村と婚約者の権沢満子がすでに待っていた。
猿島では三太郎は得意のやらせの連発で、ボクのゴリラのぬいぐるみを着せて駆けまわらせたり、中年婦人に密教の踊りをさせてみたりとやり放題だった。
そして猿島に渡った3日後、事件は起きた。その日は朝から暴風雨で船は欠航、陸地との連絡手段もなくなった。一行は田村の屋敷で無為に過ごすしかなかったが、そこで殺人事件が起きた。
殺されたのは西村カメラマンで自室で背中を刺され死んでいた。だが、西村カメラマンが部屋に入り、殺されるのが見つかるまでその部屋は複数の目で監視され、窓は暴風雨のために外から釘づけにされていた。とても窓から出入りできる状況ではなかったし、その痕跡もなかった。
しかも暫くすると西村カメラマンの死体は部屋から消えてしまったのだった…
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