龍臥亭事件

御手洗潔が北欧に旅に出て、ひとり横浜に取り残された石岡和己のところに、二宮佳代という女性が訪ねて来た。佳代は霊感の赴くままに岡山に旅をするように霊能師の託宣を受け、その旅に石岡を強引につき合わせた。
石岡と佳代が行きついたのは、姫新線の貝繁という小駅で、さらに駅前からバスに乗った。これも佳代の霊感の向くままだった。途中の貝原峠でバスを降りた2人は、山を越えた悪路を歩き貝繁の集落にたどり着く。さらにその外れにある元旅館龍臥亭にたどり着いた。龍臥亭の主人犬坊一男に一夜の宿を請うたが拒絶され、押し問答になったが、そこで事件が起きた。
龍臥亭の一室から火が出たのだ。しかもその部屋には人がいるらしい。石岡も消火に協力し、部屋の戸を破ったが、部屋の中では女性がすでに息絶えていた。しかも女性の死は銃弾によるものと思われた。密室殺人事件と火災が同時に発生したのだった。
死んだ女性は、龍臥亭に滞在していた琴の演奏家菱川幸子であった。この事件を機に石岡と佳代も龍臥亭に泊まることになった、というより警察の要請で龍臥亭に泊まらざるを得なくなったのだ。龍臥亭は不思議な建物で、主人の犬坊一家が日常暮らす建物を龍尾館といい、ここから時計回りに23の部屋が並んでいた。
23番目の部屋の先が龍頭館と呼ばれる建物で、ここには大浴場があった。龍頭館の先には龍尾館があったが、龍尾館の3階と龍頭館の1階が渡り廊下で結ばれていた。つまり龍尾館から23部屋が少しづつ上昇しながら楕円形につらなり、やがて龍頭館に達するのだ。
23の部屋自体は水平であったが、各部屋は龍頭館に向うに従って高くなっていた。この間をつなぐ渡り廊下も傾斜しており、渡り廊下の左側には部屋が連なり、右側には中庭があった。その龍臥亭はすでに旅館としての営業はしていなかったが、少数ながら滞在者がいた。
石岡たちが龍臥亭の泊まった翌日、第二の事件が起きた。今度は中丸晴美という手伝いの女性が撃ち殺された。晴美は滞在者のミチとその子のユキ子の3人で、仏壇に向かって並んで手を合わせていると、突然銃弾が飛んできて晴美を撃ち倒したのだ。
一緒にいたミチ親子は、何が何だかわからなかった。2日続きの不可解な殺人事件だったが、龍臥亭では半月ほど前にも不可解な殺人事件が起きていた。半月前に殺されたのは、小野寺錐玉という女性で、雪の日に中庭から忽然と消え、バラバラ死体となって発見されたという。
しかもその死体の額には7の字が油性ペンで書かれ、歯が黒く塗られていたという。相次ぐ事件に捜査のために龍臥亭に来ていた岡山県警の刑事もお手上げ状態だったが、事件はさらに第3、第4と続いていった。
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