灰の迷宮

朝、新宿駅西口に停車中の路線バスにホームレス風の男が乗ってきて、いきなりガソリンを車内に撒き始めた。乗客や乗務員はパニックになり逃げ出す者、男を取り押さえるものなど様々だったが、乗客たちに取り押さえられた男は火をつける前に外に連れ出された。
だが逃げたサラリーマン風の乗客が慌てて道路に飛び出し、走ってきたタクシーに撥ねられて命を落とした。さらにその直後にバスが発火し、爆発してほぼ全焼した。
幸いなことに乗客たちは全員外に出ていたので、バスの焼失での死者やけが人はゼロ。ただし、このどさくさで犯人の男を取り逃がしてしまった。
タクシーに撥ねられて死んだ事件の唯一の犠牲者は佐々木徳郎、鹿児島の証券会社に勤務するエリートだった。佐々木は息子の公一の大学受験に付き添って上京していた。
この朝も息子のJ大学への受験に付き添ってホテルを出たが、忘れ物を取りにホテルに戻り、被害にあった。

事件を担当したのは警視庁の吉敷刑事。吉敷は徳郎がなぜバスになど乗っていたのか疑問を感じた。公一によれば徳郎は一緒にJ大学に向うはずだった。それが方向違いのバスに乗っていたのだ。
しかもガソリンをかけられて激しく燃えていたのは、徳郎が持っていたバック。そのバックには公一の受験用具が入っていた。公一によれば、ホテルを出るときに徳郎が持ってやると言って持っていたものだった。
他の乗客によればホームレス風の男がバスに乗り込んできたときに、男は徳郎のバックに集中的にガソリンをかけていたというのだ。話しを聞いた吉敷は、まるで打ち合わせたような行為と感じた。
佐々木のことを調べるために吉敷は鹿児島の警察に照会した。すると鹿児島の警察から佐々木の書斎の机の中に新聞の切抜きが発見されたという。
その切抜きは2年前のA新聞のもので、競馬の騎手が不正を働いたと言うもの。この切抜きの記事には2年前に吉敷が扱った事件と関係があった。
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -