奇想、天を動かす

札沼線五つの怪と副題にあるように、昭和32年に北海道を走る国鉄札沼線で起きた怪事件に警視庁吉敷、道警牛越の両刑事が挑む。

発端は東京浅草の仲見世で、浮浪者風の小柄な老人が400円の菓子を買い、消費税を請求されたがそれを払わずに、追いすがる店の女主人をナイフで刺し殺した事件だった。
犯人はすぐに取り押さえられたが、老人はただ笑うばかりで、脅してもすかしても名前すら言わない。被害者は桜井佳子という独身の中年女性だったが、2年前まで代議士に囲われていたらしい。
老人はハーモニカがものすごく上手く、電車の車内でハーモニカを吹くことでも有名だった。消費税導入時で、この事件はマスコミに大きく取り上げられ、やがて宮城刑務所の刑務官から老人の身元に心当たりがあると連絡が入った。
担当刑事の吉敷は宮城に飛んで刑務官から話を聞くと、老人は2年ほど前まで宮城刑務所に収監されていた行川郁夫とわかった。
行川の罪状は殺人罪、20年以上前に藤枝で幼児誘拐殺人事件を起こし、有罪判決を受けて収監されていたのだった。だが、行川を知る人間は、行川は冤罪であり、出所後も殺人など出来るわけはないと口を揃えた。

行川は無学で文字の読み書きもほとんど出来なかった。それが刑務所内で一生懸命に勉強し、短篇小説を書くまでになったという。
吉敷はその短篇小説を読んだ、さらにどこから入手したのか、その小説は週刊誌にも掲載された。そんなときに道警の牛越から吉敷に連絡があった。行川の書いた小説は昭和32年に北海道で実際にあったことだという。
その事件とは、北海道の札沼線でピエロが列車内を踊りながら歩き、そのピエロがトイレに入った。そしてトイレの中で多くの蝋燭に囲まれて頭をピストルで撃ち抜かれて射殺された。
車掌や乗客はピエロの死体に驚いて現場保存の為に、トイレのドアを閉めて鍵をかけたが、火災防止のために蝋燭は消しておいたほういいと気づき、30秒後にドアを開けると死体が消えていた。
狐につままれていると、今度は首のない死体が歩き出して車内はパニック。その直後に列車は大きな音を立てて脱線し、死者まで出したという。
脱線の直後に機関士や車掌は白い巨人が現れて、赤い2つの目を光らせたという。この事件は原因不明のまま迷宮入りとされていた。
その事件そのままを小説仕立てにして行川は刑務所で書いていたのだ。吉敷はピエロから連想して、行川がサーカス関係者ではないかと睨んだ。

島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -