Pの密室

御手洗潔の幼少年時代の中篇2篇を収録。
鈴蘭事件
御手洗潔の幼稚園時代の話。潔はそのころ横浜のセリトス女子大の理事長をしている伯母のもとで養われており、女子大内にある理事長宅から幼稚園に通っていた。
その女子大の通学路にあるトリスバー・ベルの娘鈴木えり子は潔と同じ幼稚園に通っていて、潔の伯母は飲屋の娘だと毛嫌いしていたが、潔とは仲良しであった。
そのえり子の父親が、雨の日の交通事故で死んだ。車に乗って魚を買いに磯子の方に行き、車ごと海に落ちたのだという。警察は自宅兼用のトリスバー・ベルを調べたが、バーの中はガラスだらけだった。
透明なガラスが全て床に落とされ、こなごなにされていたのだ。不思議なことに壊されていたのは透明なガラスだけで、色つきのコップやウィスキーのビンなどは何事もなかった。
そしてもう一つ、カウンターにあった花瓶が空になっていた。花瓶にはすずらんが生けてあったのだという。このすずらんは潔の家にある大きな花壇から取られたもので、いつもえり子が潔にねだって持って行くのだった。
この状況を見て潔は、えり子の父親は殺されたもので、犯人もわかると言う。だが幼稚園児の言うことに警察は耳を貸すはずもない。ところが、今度はえり子の母親に大きな災難が…

Pの密室
御手洗潔が小学校2年のときの事件。絵の横浜市長賞の最終選考を一人でやっている土田富太郎画伯が、賞の絵の選考中に殺された。
土田画伯の家は高圧線の鉄塔のすぐそばにあって、その鉄塔を避けるためにYの字型をした奇妙な家であった。ここは土田画伯の仕事場として建てられたものだが、最近は画伯は妻子がいる家には帰らず、この奇妙な家で弟子で愛人関係にある天城恭子と暮らしていた。
土田画伯はその天城恭子と一緒に殺されていた。画伯の家の1階にある正方形の和室で、2人は刃物でめった刺しにされて殺されていた。
部屋の床には多くの絵が敷き詰められていた。その絵は横浜市長賞に応募し、最終選考に残った絵であり、絵には2人の血が塗られているか赤絵の具が塗られていた。
凶器は現場に無く、土田画伯の家は玄関も全ての窓も内側から鍵が掛けられていた。特に出入りのしやすそうな個所は、大半が外から細工をして鍵を掛けることが不可能なスクリュー錠であった。
しかも2人の死体のあった和室の戸にも内側からスクリュー錠が掛けられ密室になっていたのだ。もちろん和室にある窓も、濡れ縁への戸もスクリュー錠が掛っていた。
和室に敷き詰められた絵は全部で136枚、小学生の部88枚、中学生の部48枚であった。ところが昨年までは市長賞の最終選考は小学生の部70枚、中学生の部70枚の計140枚であった。
潔は140枚から136枚に減ったことと事件はおそらく関係があるといい、学校帰りに現場を見に行くが…


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