踊る手なが猿

表題作ほか、名作暗闇団子を含む中短篇4篇を収録する中短篇集。
踊る手なが猿
新宿地下街にある喫茶店Bに勤める亀永純子は、向かいのケーキ屋のマスコットとして飾られている猿の人形を気にかけていた。
その人形には赤いリボンが結んであるのだが、それが時々に結ばれている場所が変るのだ。左手だったり、右手だったり、足であったり、なぜそんなことをするのだろう?
ケーキ屋は初老の男と若い女が2人でやっていて、純子は親子だと思っていた。ところがそのことをBの店長田川拓哉に聞くとケーキ屋の2人は親子ではないという。
なおも事情を聞きたい純子だったが、田川はそれを遮って外出してしまった。それが田川を見た最後となった。その夜田川は新宿のホテルで毒物を飲んで死んだ。
ワープロのものであるが遺書があり、また田川の住んでいたマンションも解約されていたので、警察では自殺と考えた。田川と関係のあった純子は、翌朝その死を聞いて驚くが、絶対に自殺ではないと確信を抱く…

Y字路
吉敷刑事もの。
三田瑛子が川崎登戸の多摩川べりのマンションに車で帰り部屋を開けると、そこには見知らぬ男の死体があった。瑛子は110番しようとするが、思いとどまり結婚を約束した山岸透に電話する。
山岸は成城に住む金持の息子で建築士であった。瑛子はホステスをしていたときに山岸と知り合い婚約したのだが、山岸の両親はホステスの前歴は隠していた。しかし両親はこの結婚には反対で、透が半ば強引に話を進めていた。
そんな状態だから、瑛子の部屋に見知らぬ男の死体があったなどとなったら、婚約は解消されかねない。という訳で瑛子は山岸に連絡を入れたのだ。
山岸は車で駆けつけてくると、男を瑛子の車に乗せて、マンションの前の坂道を惰性で走らせて交通事故に見せかけようと提案した…

赤と白の殺意
私は子供の頃、1年の半分以上を軽井沢の別荘で過ごしていたが、小学5年の時に父が事業に失敗して別荘を永久に失って以来、軽井沢を敬遠していた。
軽井沢には赤い血の池の記憶があって、それが私の心理に影響を及ぼして軽井沢を忌避しているようだ。30歳になった今、私はそんな過去を探りに、意を決して初冬の軽井沢に向うことにした。

暗闇団子
柳橋近くの高校の工事現場から出た江戸時代の遺構。その中で樽型の小壺か出て来た男女一対の骨に添えられていたのは、暗闇団子と辛うじて読み取れるボロボロになった紙。そして0.1ミリという現代でも再現できないほど驚異的な歯を持つ櫛。この櫛は最高級のもので、遺構があった庶民レベルの人達が住む町などあるべきものではなかった。
物語はタイムスリップし、江戸時代後期の文政の頃。柳橋近くの橋本町の長屋に加賀金沢から武士を捨てて出てきた四方助という男が住んでいた。
四方助は筆耕で食い繋いでいたが、ある日のこと四方助に仕事を持ってきてくれる利兵衛が、一張羅を着て訪ねて来た。これから吉原に遊びに行こうというのだ。四方助も半ば好奇心、半ば付き合いで2人揃って吉原に行ったが…


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