展望塔の殺人

吉敷刑事ものの表題作ほか5篇。
緑色の死
子供の頃から緑色に恐怖を感じ、野菜も食べられない虚弱体質の男。その男がひょんなことから父親が死の直前に男に宛てた手紙を手に入れる。その手紙には、父親の犯した犯罪が書かれていたが…

都市の声
原宿駅からマンションに向っていた吉井優子は、途中の果物屋で梨を買っていた。その時果物屋に優子宛の電話が架かる。そして気味の悪い男の声。その後、電話は優子を追いかけるようにあちこちに架かる。次に入ったブティック、途中にあるケーキ屋。そして部屋に帰ると不思議に電話は掛かってこなかった。
一週間後、やはり同じように電話に追いかけられる。途中の赤電話や飛び込んだ喫茶店などに優子宛の電話が架かる。電話の男は人間ではなく、東京中の電話を支配しているのだという。
逃げ出す優子。気づくと新宿のデパートにいた。しかしそこでも優子を追って電話が…

発狂する重役
吉敷刑事もので、焼き鳥屋で一緒になった男に吉敷がある事件を語る。その事件とは…
K商事の常務犬童慎太郎は若い頃に軽井沢でアイスクリームを売っていた。そのとき別荘に避暑に来ていた娘を強姦する。その娘、小池育子はその後外交官夫人となるが、犬童は自分が悪いにもかかわらず、過去の過ちをネタに育子を脅迫し、強請り取った金でK商事を友人たちと興した。犬童とはそういう男なのだった。
その後も犬童は育子と関係を続けた。ある日の昼間、犬童はいつものように重役室に育子を呼びつけて、服を隠して部屋に閉じ込めた。そのまま外出して数時間後に戻ってくると、部屋に育子はいなかった。
社員に聞いても帰った様子はないという。といって下着姿で帰れるはずもない。育子はいったい…

展望塔の殺人
吉敷刑事もの。東京王子飛鳥山公園の回転展望レストラン。その日は雨で客は中年婦人の2人連れだけ。その2人連れがココアを追加注文し、アルバイトの東大生矢部富美子が、それをテーブルに持っていった。
そして富美子がココアをテーブルに置いた後、いきなりナイフで2人連れの1人を刺して逃走したのだった。刺された主婦は井上典子。
やがて富美子が自首してきた。井上典子と矢部富美子の間に接点はなく、衝動殺人と考えられた。ただ奇妙なのは典子も富美子も頭は切れ、周囲の評判もいい人間で、完璧と言って言いほどっだった。その2人の間に何故こんな事件が起きたのか…

死聴率
テレビドラマ「蒼い巨星」は、スポンサーの50周年でもあり、絶対に視聴率を稼がねばならない番組であった。ところが蓋を開けてみると、第1回は20%にも届かず、週を追うごとに視聴率が下降していった。
このままでは左遷確実の番組ディレクターと広告代理店の番組担当者は視聴率アップのためにある策を練った。

D坂の密室殺人
昭和31年、D坂の私の部屋の向いの建物には、1人の狂女が住んでいた。住んでいたと言っても半ば幽閉に近く、世話を焼く中年婦人が時々散歩に連れ出す以外には、建物の中に閉じ込められていた。
建物といっても倉庫のような造りで、窓には狂女のためか鉄格子が嵌められていた。その建物に時々中年の男が通ってきた。何のためかはわからぬが、建物内に入りかなりの時間を過ごすと帰っていく。
そんなある時、狂女が建物を脱走した。そして建物の中では、いつも訪ねてくる中年男が体中を縛られて殺されていた。犯人は狂女ということになったが、中年男が死んでいた部屋は中から鍵がかかり、窓も板戸で塞がれた密室であった。狂った女に密室殺人ができたのだろうか…


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