Yの構図

上野駅に着いた新潟発の上越新幹線とき418号のグリーン車内で一人の女が死んでいた。その4分後に隣のホームに入ってきた盛岡発の東北新幹線やまびこ194号のグリーン車からは男の死体が見つかった。
ときの車掌の証言で女は新潟から乗車しているのは間違いなく、隣席には花がたくさん置かれていた。一方やまびこの男の方も盛岡から乗車しており、ときと同じく男の隣の席には多くの花が置かれていた。
男も女も青酸入りの缶ビールを飲んでの中毒死で、ビールはともに窓際に置かれていた。そして女の死体が出たときの車内からはチョウセンアカシジミという蝶が見つかった。
女は岩田富美子といい現在は新潟に住んでいたが、少し前までは盛岡でスナックをやっていた。男は小淵沢茂という盛岡の中学教師であった。
そして不思議なのは、ときで見つかったチョウセンアカシジミは岩手県盛岡を中心とする地方や宮古地方、会津と新潟の県境付近など東北のごく限られた地域にしか生息しない蝶であったことだ。これがやまびこで見つかったのなら何の不思議もないのだが・・・

岩田と小淵沢の死は心中とも考えられたが、上野駅に駆けつけた吉敷刑事は他殺を疑う。心中にしては2人別々に死ぬのは変であるし、その後岩田の荷物の中から、小淵沢の手紙が見つかった。
小淵沢の手紙はワープロで打たれており、岩田を東京に誘う手紙であったが、必ず東京に来るときに手紙を持参するように書かれていた。この手紙も心中にしては変であった。
さらに調べていくと小淵沢の担任していた盛岡の中学校のクラスでは、いじめによって自殺した生徒がいて、マスコミを賑していた。その生徒は木山秀之といい、木山をいじめていたのが岩田の息子の雅治であった。
このいじめの事件は大問題になり、小淵沢は針のムシロで、岩田母子は盛岡にいたたまれずに新潟に引っ越したのだった。吉敷は岩田と小淵沢に強烈な恨みを持つのは、木山秀之の両親と見て、盛岡に向った。
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