死体が飲んだ水

もと農林省局長、札幌の民間会社に副社長として天下って引退した赤渡雄造が殺されて、その死体が札幌の赤渡家に送られてきた。
死体はバラバラにされて黒い大型のトランク二つ入れられていた。一つには胴体が、もう一つには両足が入っていたが、両手と頭部はどこにもなかった。
雄造には妻静枝と3人の娘、晶子、裕子、実子がいて晶子は東京に、裕子は水戸に嫁いでいた。実子は札幌にいたが婚約していた。
毎年1月の誕生日に雄造の趣味の中国の骨董品を晶子夫妻、裕子夫妻がそれぞれ贈る習慣があって、トランクはその発送用に数年前に買われた物だった。
骨董品は晶子夫婦がまず買ってトランクに入れて水戸の裕子のところに送り、水戸では晶子のところのものとダブらないようなものを調達し、水戸から晶子夫妻、裕子夫妻のそれぞれのトランクを一緒に発送するのが常だった。
今年も例年通りに晶子夫妻が石のついたてを裕子夫妻が金属製の唐獅子一対をそれぞれ用意し、トランクに入れて鉄道便で札幌に送った。
札幌では雄造の運転手の沢入と実子が駅に荷物を取りに行き、家に運び入れて開けてみると死体が出てきたというわけだった。

トランクが札幌の送られてきたのは1月14日、水戸で発送されたのは11日であったが、雄造は4日から10日まで裕子と晶子のところに旅行に行っていた。
その途中の8日、晶子の家から農林省時代の友人に会いに外出、昼を一緒に食べてコーヒーを飲んで別れ、そのまま失踪していた。
やがて雄造の死体の残りの部分、両手と頭部の入った、同じく黒いトランクが千葉駅のコインロッカーから見つかった。16日から預けっぱなしになっていたために規定により開扉したところ死体が出てきたのだった。
雄造の死因は溺死、さらに死体を調べたところ海水が混じっていて海に近い川か湖で溺死したと考えられた。さらに水質を調べたところ死因となった水は千葉県銚子市付近の利根川の水であることが判明した。
捜査にあたった札幌署の牛越刑事は水戸、東京、銚子を歩くが…

「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」に続く島田荘司の3作目の長篇はガラリと雰囲気が変わり、時刻表も挿入された過渡期的な作品。その後「死者が飲む水」に改題。
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