斜め屋敷の犯罪

北海道のさいはて、オホーツク海を見下ろす崖の上に立つ奇妙な屋敷「流氷館」。流氷館は3階建ての西洋館とその東隣に隣接した円筒形の塔からなっていた。周囲は一面の荒野で人家は一軒もなく、近くの村までは10分ほど歩かなくてはならなかった。
この流氷館が奇妙なのは塔も西洋館も最初から傾けて建てられていたことだった。どちらも南北に傾けて建っていて、床も天井も内部は全てが傾いていた。
流氷館の主人は浜本幸三郎という引退した実業家で、普段は末娘の栄子、運転手兼執事の早川康平、康平の妻で家政婦の千賀子、住込みコックの梶原春男の5人が住んでいた。
幸三郎以外の4人は西洋館に部屋を宛がわれていたが、幸三郎は塔の最上部に部屋を持っていた。塔は最上部の幸三郎の居住部分以外は何もなく、その幸三郎の部屋に入るには西洋館から渡り階段を伝って行く以外に方法がなかった。
渡り階段は西洋館側から機械仕掛けで跳ね橋が降りるように降りて、西洋館と塔を繋ぐのだった。

クリスマスの夜、幸三郎は客を招待してパーティを開く。客たちは西洋館に部屋を宛がわれたのだが、最初の夜に主賓の菊岡栄吉の運転手上田が部屋で殺されていた。
上田の部屋は元来がスポーツ用具置き場として使われていた部屋で、そのために部屋の中からは出入りができなかった。上田はその部屋でナイフで刺殺されていた。
上田の部屋の唯一のドアには中から落し錠が掛かり、窓にも中から掛け金が掛けられて、しかも鉄格子まで嵌っているという密室であった。
その中で上田は右手をベッドの足に縛られて、両手を上に上げ足を奇妙に折った変な形で死んでいた。しかも上田の死んでいた部屋の外に積もった雪には足跡がなかった。

警察が呼ばれ、主任捜査官の牛越刑事をはじめ4人の警察官が翌日の夜に流氷館に泊まることになった。その夜今度は菊岡栄吉が殺された。
菊岡の部屋は地下になっていて窓はなく、ドアには錠のほかに上と下に頑丈な閂錠が掛かっていた。外部と通ずるのは部屋の上部の隅に設けられた小さな換気口だけ。
警察官が泊まり込んだ家で密室殺人事件が起きたのだ。しかも死亡推定時刻には館内の全員にアリバイがあるか犯行が不可能であったことが立証された。
雪に閉ざされた斜め屋敷で起きる殺人事件は警察の手には負えず、東京から御手洗が呼ばれた。

「占星術殺人事件」に続く作品で、島田のキャラクターである御手洗潔と牛越刑事が北海道のさいはての地に建つ斜め屋敷での連続殺人に挑む、「占星術殺人事件」に並ぶ大傑作。
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