ジョーカー

京都府北部美奈湖に浮ぶ小島に建つ幻影城は、江戸川乱歩の本名と同じ平井太郎が建てた、壮麗な城であった。便宜上は大旅館と呼ばれるが、言葉では何とも表現できない建物であり、まさに異形の城と呼ぶのが相応しかった。
「関西本格の会」では秋合宿を幻影城で行うのが恒例化しており、今年も関西在住の本格派推理作家9名が集まって合宿が行われた。
この季節の幻影城にはほかに客がないのが普通であったが、今年は初老の一人の客があった。あとでわかったが、その客はJDC(日本探偵倶楽部)の第2班副班長であった。
JDCとは京都にある日本の名探偵たち350名が集まる組織であり、第2班副班長ともなれば国際的にも通用する、かなり優秀な探偵であった。
さて、今年の「関西本格の会」では秋合宿の幹事は、先日1500枚の大作「永遠の輪廻」を発表して大成功を収めた、濁暑院溜水であり、溜水は合宿最初の夜にメンバーが集った席で、推理小説構成要素30項の提案を行った。
その提案は、不可解な謎に始まり、連続殺人、遠隔殺人、密室、暗号、手記、見立て、首斬りなど、推理小説に取り込むべき30の項目を示したものだった。
そして、その夜から「芸術家」と名乗る人物が、幻影城で連続殺人事件を開始した。しかも「芸術家」は溜水の提唱した30項目を、自らの殺人に取り入れ、不可能犯罪を繰り返したのだ。

「芸術家」は最初に発見された死体のそばに、8つの生贄を求めると予告し、幻影城の中は首を斬られた死体や、密室の中で殺された死体、口にオレンジを咥えさせられ逆立ちした死体、水で満たされた部屋の中にある死体、密閉された小屋の中で電気椅子で殺された死体などで満たされていった。
人間だけでなく、平井太郎が飼っていた双子の黒猫が首を斬られて殺され、その口に花を咥えさせられていたりもした。
幻影城に滞在していたJDC第2班副班長の連絡でJDC本部も動き、最高レベルの第1班の探偵龍宮城之介や霧華舞衣も幻影城に派遣されてくるが、それをあざ笑うかのように殺人は続く。
一方、濁暑院溜水は幻影城で起きる事件を記録して小説にする作業を開始した。

前作「コズミック」の中で言及されている幻影城での連続殺人が、この「ジョーカー」でこの幻影城事件の解決後の続いて起るのが「コズミック」で描かれる密室卿事件。
時間軸では「ジョーカー」→「コズミック」となるが、どちらから読んでも楽しめる。

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