殺意の迷走

パソコン通信で知り合った仲間たちが、ロケハンと称して薔薇の城という西洋風の古城に向かっていた。仲間というのは新しいテレビゲームソフトを開発するための仲間で、皆で集まって喧々諤々の話し合いをしようというわけだ。
薔薇の城とは戦後の成金の一人大河原善治が映画のロケをするために建てた西洋風の古城だった。売れなかったミステリ「薔薇の城」をもとに10年ほど前に建てられたもので、大河原はここを舞台に薔薇の城という映画を撮影しようとしていた。
もっとも原作が売れなかったのだから、興行収入は期待できず、成金の道楽のようなものだった。ところが城の完成と待っていたかのように大河原の没落が始まり、けっこく映画は作られず城も人手に渡ってしまい放置されたままだった。
今回メンバーの一人である科田光留が話をつけて、ゲームのロケハンのために借り受けることにしたのだが、実は科田には他の目的があった。メンバーを殺すことだった。
薔薇の城はミステリのために建てられた城だから、場内は立体迷路の様であった。一度どころか相当に慣れなければ場内不案内であり、そこが科田の付け目でもあった。さらに城は人里離れた場所にあり、高い塀で囲まれた上、出入り口も一か所であった。
その出入り口も電動で大きな扉が動く仕掛けになっていた。科田はその機械を壊して扉の開閉を不可能にし、電話線を切断し、念には念をいれて電話機も壊した。これで城と外部の接触は不可能になったのだ。
科田はわざわざ持ってきた凶器、それは小説「薔薇の城」で使われた十字架を研ぎ澄ましたものだったが、それを持って深夜、第一のターゲットにした桧垣静江の部屋に向かった。
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