紫の悲劇

名古屋市内のラブホテルで男の死体が発見された。被害者は梶間恒行之というサラリーマンで、死因は毒殺だった。猛毒のアコニチンがコップに残っていたビールから検出された。被害者のいた部屋はパープルルームで、その名の通り部屋の調度類はすべて紫色で統一されていた。
そして被害者とともにホテルに来た女性も、紫色の和服を着ていたというのだ。さらに被害者の右手の小指が、なくなっていた。切り取られたのではなく、食いちぎられたようだった。調べてみると、犯人のものかもしれない遺留品が見つかった。
被害者の服のポケットから薄紫色の女性用のハンカチが出てきたのだ。そしてそのハンカチには、香がしみこませてあった。なおも調べると、被害者の名刺入れから霞田志郎の名刺が見つかった。
霞田志郎は本業は作家であったが、過去に数々の難事件を解決し、愛知県警では知らぬものはない名探偵で、県警本部長すら頼りにするほどの存在だったのだが、事件後の虚脱感に耐えられなくなって、数ヶ月音信不通になっていた。
そのことは警察関係者も知っていたが、今度の事件では志郎の名刺を被害者が所持していたのだから、ぜひとも事情を聴きたかった。そこで愛知県警の三条刑事が志郎の妹で漫画家の千鶴を訪ねた。三条刑事は千鶴の恋人でもあった。
千鶴が志郎の名刺ホルダーを調べてみると、そこには梶間の名刺があった。少なくとも一度はあったことがあるらしかった。だがそれ以上は何もわからなった。そんなとき数ヶ月の放浪を終えて志郎が突然に帰ってきた。
志郎によれば、梶間とはパソコン通信の仲間であり、小説家志望だったので、会ったことはあるものの、それ以上の関係はなかったという。志郎に期待をしていただけに、警察はがっかりした。
それをあざ笑うかのように第二の事件が起きた。やはりラブホテルで男がアコニチンで毒殺された。食いちぎられた小指や、香の匂いのするハンカチ、さらに紫色の和服を着た女など、まったく第一の事件と同じ状況だった。
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -