予告探偵 西郷家の謎

大戦の記憶がまだ人々の多くに残る1950年、ユーカリ荘という西郷家の邸で事件は起こった。西郷家は300年の歴史がある名家であり、とくに世間に名を成したのは現当主瑛二氏の叔母美知佳と優里佳の双子の姉妹であった。美知佳と優里佳は美貌を兼ね備えた芸術家姉妹であった。
姉の美知佳は絵画、妹の優里佳は彫刻、それぞれに数は少ないながらも素晴らしい作品を残していた。その作品は、ほとんど公開されることもなく、それがまた人気となり人々を熱狂させた。その姉妹は、作品を美術館で一般公開するすることになった日、会場へ向かう途中に自動車事故で死亡した。
姉妹の死により、姉妹のすべての作品は西郷家がユーカリ荘で保管し、一切門外に出ることはなくなった。作品はごく限られた西郷一族のものとなった。ユーカリ荘には当主の瑛二のほかに、長男の涼馬、次男の倖也、長女の花鈴の4人が執事の桐野以下使用人たちと住んでいた。
そのユーカリ荘に、ある日一通の手紙が届いた。差出人は摩神尊とあり、12月4日12時、罪ある者は心せよ すべての事件の謎は我が解く」とだけ書かれていた。12月4日は美知佳と優里佳姉妹の命日であるばかりか、瑛二の妻の有加利の命日でもあった。

さらにその日は西郷家にとって大きなイベントが予定されていた。長女花鈴の結婚相手を決める日であった。花鈴の結婚相手の候補は3人で、柿沼コンツェルンの御曹司の柿沼勇、文部省事務次官の緒方博隆、それに東京から疎開してきた画家の星宮秀介だった。
柿沼は財力をバックにしており、柿沼が花鈴と結婚すれば将来の西郷家の財政は安泰だった。緒方は有能な官僚で、将来の大臣と目されており、柿沼家の邸や姉妹の作品が文化財として国の助成を受けられるのも緒方の力に負うところが大きかった。それに対して星宮は貧相な売れない画家であったが、花鈴の気持ちは星宮に傾いていた。
さて、ここに木塚東吾という作家がいる。作家では生計を立てられず、いくつかの雑誌に文章を書いて生活している、売文家といった方がいい人物だった。その木塚のところに現れたのが、探偵としていくつかの事件を解決した摩神尊だった。摩神はユーカリ荘のコレクションを餌に木塚を連れ出し、2人は鬱蒼とした森に囲まれた辺鄙なユーカリ荘に向かった。
木塚はいつもの通りの強引な摩神のやり口にあきれ、門前払いを食らうと思っていたが、どうしたことか瑛二氏の指示で邸に入れてもらえた。だが瑛二氏に一喝され追い出されそうになる。が、なぜか倖也に気に入られて、倖也の客としてユーカリ荘に滞在することになった。それが12月3日のことだった。
そしてその夜、晩餐の席で瑛二氏より重大な発表があった。本来なら4日に決めるはずだった花鈴の結婚相手を、繰り上げて発表したのである。しかもその結婚相手は意外なことに星宮秀介だった。皆は驚いたり反対したりし、柿沼と緒方は怒って席をけって立ち去った。なによりも当の星宮が当惑していた。そして事件は起きたのだった。
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