ベネチアングラスの謎

霞田志郎と千鶴の兄妹推理シリーズの短篇集で、雑誌掲載の7篇に書下ろしの「ウィザウト・ユー」を加えた8篇。
ベネチアングラスの謎
大和田皮膚科医院の院長大和田彩子が、全裸で診察室で殺されているのが見つかった。発見者は彩子の妹で、同院で看護婦をしている歌夜子で、朝医院に来たところ姉の死体に出くわし警察に通報してきた。
脱がされた服は見つからず、部屋の中にあったベネチアングラスの花瓶がひとつ粉々に砕けていた。歌夜子の婚約者寺地、看護婦の水野、事務員の長沢、かつての彩子の婚約者で今はタクシーの運転手をしている上原など容疑者にはことかかないが…

パズル・パズル
黒っぽい石材を煉瓦のように積み上げ、窓や壁にアールデコ風の装飾がされた黒百合館で、主人の歌垣祥英の妻伸子が死んでいた。警察は祥英がロープで首を絞めて殺したとして逮捕しようとしたが、たまたま黒百合館に客として滞在していた素人探偵降矢木龍彦の名推理で、伸子の自殺として処理された。
その事件から15年後、再び黒百合館で事件が起きた。祥英の後妻偲が、自分の部屋で殺されていた。今度は間違いなく殺人事件だった。その日は偲の誕生日で、パーティの後、偲はひとり部屋に戻って、趣味のジグソーパズルに取り組んだ。誕生日プレゼントされた1000ピースのパズルだった。
偲は1000ピースくらいのパズルなら10時間くらいで組み上げてしまうほどの腕で、そのとき部屋のパズルは約200ピースほど組み立てられており、それから犯行時間が推定できた。その線で警察が捜査を進めていると、客として招かれていた男がしゃしゃり出てきた。その客の名は降矢木龍彦といった。

死の刻印
カーディーラーの営業マン寺沢英之が自分の住むマンションで死体となって発見されたのは、死後2日ほどしてからだった。独り暮らしの寺沢が無断欠勤し、訪ねてきた会社の上司によって発見された。
寺沢は問題児で、多くの人々とトラブルを起こしていた。ユーザーの男、会社の上司、同僚の営業マンと容疑者にこと欠かなかった。一方、寺沢は自分のホームページを持っており、そこに日記を書いていた。
とはいえほとんどが悪口、陰口の類で、人を不快にさせるものだったからアクセス数は微々たるものだった。だが、殺害される直前にもページの更新が行われており、志郎はそれが犯人特定の手掛かりになるというのだった。

みぎか、ひだりか
霞田志郎が拳銃で撃たれた。それも白昼の街中での出来事だった。バス停に向かう途中、自販機で飲物を買おうとしたところ、急停車した車から降りた男が何か叫んで、志郎の背中を拳銃で撃ち、そのまま車で逃走した。
幸いにして弾は急所を外れ命に別状はなかったものの、妹の千鶴は一時は半狂乱になってしまった。白昼の出来事で目撃者も多く、犯人は暴力団関係者と思われた。車はレンタカーで、その線からあたったところ白石組の関係者が犯人と考えられた。
だが、志郎に心当たりは全くなかった。それともうひとつ、目撃者が妙な証言をしていた。犯行を終えた犯人が車に乗り込んだとき、運転席の男に「みぎか」と問いかけ、運転者は「そうだ」と答えながら、車は左に曲がって消え去ったというのだ。

マリッジ・ブルー
霞田千鶴の友人南田亜由美の同級生だった瀬田瑞穂が、マリッジ・ブルーらしくて、結婚を前にして落ち込んでしまっていた。そこで仲の良かった坂井美春と藤原温子の3人で、瑞穂を励ましに行った。
4人で話していると、そこへ訪ねてきたのが瑞穂の婚約相手の柿沢伸靖だった。瑞穂は伸靖の姿を見たとたん興奮して自室に閉じこもってしまった。温子が後を追ったが、瑞穂は部屋のドアに鍵をかけて出てこない。
ほかの3人も集まり説得したが、何を言っても無視された。だがあまりに様子がおかしいのでドアを破ろうとしたが、そこに両親が帰ってきて合鍵でドアを開けた。するとそこには首を吊った瑞穂が…

四角い悪夢
霞田千鶴が変な夢を見た。黒猫を白くて細長い箱に閉じ込め、さらに今度は黄色いスカートに赤いブラウスの女の子を同じ箱に入れて蓋を閉めるのだ。その間、ごめんねと謝る涙声が続いている。千鶴はうなされていたらしい。
その夢の話を聞いた志郎は、古い新聞記事をあたった。千鶴が小学2年の時にひかりという女の子が、空き地に放置された冷蔵庫に閉じ込められて死亡するという事件があった。ひかりは千鶴と同じ小学校の同級生だった。千鶴は事件の責任が自分にあるのではと悩むが…

紫陽花の家
千鶴の恋人の三条刑事の叔父岩永浩生も、三条と同じく愛知県警の刑事だった。岩永は暴力団の内部抗争で殺人を犯し、その事件を捜査していたが、ある夜に呼び出しを受けて出かけた公園で殺されてしまった。
現場の遺留物から犯人は岩永が追っていた暴力団員の亀沢直樹と思われ指名手配されたが、亀沢の行方は杳として知れず、それから15年が経ち、事件は時効を迎えた。三条は前からこの事件にいわくがあると感じていたが…

ウィザウト・ユー
矢倉加奈子という見ず知らずの女性から呼び出された霞田志郎は、加奈子の友人という山口里美が書いたという日記を見せられた。そこには志郎が里美を騙してレイプしたという記述が…
日付の点から日記の記述がまったくのデタラメであることがわかり、加奈子も納得したのだが、その夜公園で里美の日記を持った女性が、焼身自殺したことから事件は思わぬ展開を見せる。
警察に同行された志郎は冤罪であることを証明し疑いは晴れたのだが、里美は里美で家にいてまったく事件のことは知らなかった。どうも焼身自殺したのは加奈子らしかった。すると事件はどういう構図を描くのだろうか、巻き込まれた志郎は頭を悩ました…


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