狩野俊介の肖像

少年探偵狩野俊介の活躍する短篇集。
金糸雀は、もう鳴かない
俊介の通う新星中学には禽舎があって、そこではカナリアが4羽飼われていた。世話をするのは5人の飼育部員で、毎日交代で世話をしていた。したがって5日1回は早出をしてカナリアの世話をする必要がある。
月曜日の朝の当番は3年生の堀内幹久だったが風邪をひいて熱を出し、1年生で俊介と同じクラスの遠島寺美樹が代わりをすることになった。
美樹は土曜日も当番だったから、あいだに日曜を挟んで2日連続での当番となった。ところが月曜の朝、教室に鞄を置いて禽舎に行くとカナリアは1羽もいなかった。
禽舎は金網に囲まれて、取りが逃げないように出入口と鳥の住処の間に準備室がある。出入口には南京錠が掛かり、準備室と鳥の住処の間の扉にも閂が掛っていた。
鍵は遠島寺が保管しており、土曜日には鍵を掛けたのは間違いなかった。合いカギは用務員が所持していたが、使用できない状況にあった。
そして禽舎の中には黄色いカナリアの羽根が落ちていたが、それには血が付いていた。カナリアはいったいどうなったのだろうか…

誰も気づかない 誰も傷つかない
新星中学の弓道部のホープ鶴岡菜々の兄康弘が、川の杭に引っかかって死んでいるのが発見された。500m上流の橋から落ちたか、自分で飛び込んだかはわからなかったが、警察では自殺と判断していた。
そんな事件があったので菜々は精神的に参ってしまい、弓道部も休部していたが、大会を前にしてやっと復帰することができた。そんなある日のこと、家に一通の手紙が来た。
差出人は兄の康弘で、手紙には兄の筆跡で「ぼくの死は、おまえにも責任が在ることを忘れるな…」と書かれていた。消印は昨日の日付であった。この死者からの手紙はいったい何を意味するのだろうか…

人が歩む、すべての道は
俊介の通う新星中学の校長室の花瓶が何者かに壊される事件があった。校長室には常に校長が在室しているか、不在の時には鍵がかけられた。
貴重品があるとの理由で、トイレに行く時にも鍵がかけられるほどだから、窓も常時施錠されていた。花瓶は校長が帰宅し、翌朝登校するまでの間に壊された。
最初は陶器の花瓶が置いてある棚から落ちているだけだった。そのときは何かのはずみで落ちたのだろうと、大して気にもとめられなかったが、次の日は落ちた花瓶の縁が欠けてしまっていた。
仕方なくガラスの花瓶を買ってきて取り替えたが、その次の日には落ちた花瓶が粉々に砕けていた。校長は狩野俊介を呼んで、誰が密室の花瓶を壊したのか調べてくれと頼んだが…

秋雨
田舎の村にある無住の寺にやってきた俊介。その寺の裏にある崖は自殺者の名所であるという。俊介の通う新星中学の生徒も、過去に遺書を残して飛び込み自殺していた。
その崖を見ているうちに雨が降って来て、俊介は寺の軒下に駆け込んで雨宿りする。すると寺の中から衣を着た男が突然声をかけてきた。数年前からこの寺に住みついていて、何人もの自殺者に声をかけているという。
その男に言わせると自殺を止めているわけではなく、ここから飛び込まないようにしているだけだというのだ。そしてなぜここが自殺の名所になったか、という話をしてくれた。


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