降魔弓事件

石神探偵事務所所長野上英太郎は、行きつけの喫茶店紅梅のマスターから森名スエという老女を紹介される。スエは80歳を過ぎてなお元気で、町に大きな影響力を持つ森名一族のドンであった。
森名一族の中心となるのが名門校修己学園で、スエは学園の名誉理事長、スエの息子の晋之助が理事長、孫の保一が副理事長であった。
スエの依頼は孫の保一ことについてだった。スエはことのほか先祖に対する尊敬の念が強く、息子の晋之助や孫の保一にも先祖への尊敬の念を忘れず、供養をねんごろにするように求めていた。
晋之助も保一もスエの言に従って墓参りをしたりしていたが、スエには晋之助はともかく孫の保一は本心から先祖を供養しようとしているとは思えなかった。
スエは保一が自分を欺こうとしていると考えて、野上に保一の行動が本心からのものかどうかを確かめて欲しいと依頼したのだった。
最初は断っていた野上も最後は結局引き受けることにして、狩野俊介とともに晋之助や保一が暮らす家に泊まりに行くことになった。

スエによれば森名家は室町時代から続く名家で、その初代の森名琢道は仕えていた殿様の病を治すために夢に現れた坊様のお告げにしたがって大弓と大矢を作り、坊様の言うように天にあった黒雲に大矢を放ったという。
大矢は雲を2つに引き裂き、雲はなくなり、それによって殿様の病は嘘のようによくなった。それ以来、森名は篤く用いられ、戦国の世も関ヶ原も生き延びてきた。
その琢道が使った大弓は降魔弓といわれて、森名家の菩提寺に治められているという。そういう由緒ある家柄なので、スエも晋之助や保一に先祖を供養し、敬うように求めていたのだ。
野上が保一と話をすると、スエの心配したように先祖の話は作り話であり、必要以上に先祖を敬う気など毛頭持っていなかった。それどころかスエの寿命ももう間もなくで、スエがいなくなれば自分が学園を牛耳れるとまで考えているようであった。
そんな遣り取りをしているところに、突然スエがやってきて、野上もスエも晋之助の家に泊まることになった。そして、その夜殺人事件起きた。
保一が部屋の中で寺にあるはずの大矢で部屋の壁に貼り付けにされ、体から火を発して死んだのだった。それを見たスエや野上をはじめ皆は先祖の祟りだと騒ぎ始めたが…
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