幻竜苑事件

少年探偵狩野俊介シリーズ第ニ作。
江戸時代から続く名家遠島寺家は、その広い敷地を利用して今では高級旅館幻竜苑を営み、多くの名士が常連客として名を連ねていた。現在の幻竜苑の経営は遠島寺重義と久枝の夫妻が行っていた。
もともと幻竜苑を継いだのは重義の兄の則光夫妻であったが、俳句などにうつつを抜かし旅館経営にはまったく無関心な則光夫妻に代って、重義が早くから経営面の采配を振るっていた。
しかし則光夫妻が台所から出火した火事で焼死し、その跡を重義が継いで、さらに幻竜苑の仲居であった久枝と結婚して旅館の経営をしていたのだった。
則光夫妻にはまだ幼い美樹という女の子がいて、美樹は重義夫妻に引き取られて養育されていたが、法的には美樹が幻竜苑の相続者であった。

ある日のこと野上探偵のもとに美樹がやってきて両親を殺した犯人を捕らえて欲しい、その犯人は遠島寺重義だと訴えたが、野上は美樹を邪険に追い払った。
その後で今度は重義が野上のもとにやって来て美樹の一件を詫びた上で、幻竜苑に不審人物が侵入しているので捜査して欲しいと依頼してきた。
美樹の件で心残りだった野上は重義の依頼を受け、ちょうど遊びに来ていた狩野俊介を助手に幻竜苑に乗り込んだ。不審人物は背の低い頭の禿げた男で、幻竜苑の離れに住む広瀬幸子を狙ったのだという。
幸子は則光の妻保子の母親で、保子が広瀬酒造という造り酒屋から遠島寺家に嫁に来て以来離れで暮らしていた。美樹を可愛がり、愛する則光夫妻は重義たちの陰謀で焼き殺されたと信じていた。
美樹に重義が則光たちを殺したと吹き込んで野上の所に行かせたのも幸子であった。その幸子は夜8時には就寝するが、10時には決まって手洗いに起きた。
そのときに不審人物が刃物を持って縁先の幸子を襲ってきたのである。だが幸子に達する前にその不審人物はどこかに消えてしまっていた。
離れの先には竜が池と呼ばれる池と、その中島にある四阿があるばかりであった。だが竜ヶ池には遠島寺家の祖先が四阿にいたところ、池から竜ヶ現れてその祖先を池に引きずり込んで食べてしまったという伝説があった。
その伝説とダブるような奇怪な事件であった。そして野上と俊介の前に再び背の低い頭の禿げた男が現れ、野上をはじめ居合わせた皆に追いかけられて四阿に逃げ込んだが、そこから忽然と消えてしまったのだった。
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