月光亭事件

少年探偵狩野俊介シリーズの第一作。
町一番の病院を経営する豊川寛治の父親は天福翁と言って、大尽遊びに金を湯水のように使う成金だった。今でも豊川の屋敷は広大な庭に迷路のような小道が張り巡らされ、屋敷の中には音楽室まである時代離れしたものだった。
庭の片隅には月光亭と名付けられた離れがあった。月光亭は西洋風で壁の半分は煉瓦造り、残りの半分はバルコニーにガラスの屋根と壁をつけたような造りになっていて、周囲には煉瓦が敷き詰められていた。
この月光亭も天福翁が造ったもので、過去に天福翁は鍵の掛った月光亭から抜け出す余興を見せて、立ち会った皆を驚かせたこともあったと言う。
その豊川家に最近怪しげな導師が入り、寛治の妻の信子に取り入って信子を信者にし、導師自身は月光亭に居着いてしまった。
寛治は導師のインチキを暴き、信子の目を覚まさせたいとして町一番の探偵野上英太郎に依頼した。野上は名探偵石神法全の助手を長く務め、法全の引退によって法全の跡を継いでいた。
その野上のもとに法全の推薦で探偵を目指す少年狩野俊介が助手として入ったところに、寛治の依頼が舞い込んできたのだった。

野上はさっそく俊介を連れて豊川邸に赴いた。豊川邸では導師の存在を巡って家族が諍いを繰り広げていた。寛治と信子の間には春子、夏子、冬子の3人の娘がいるが、いずれも父母が違うこともあって、親子間姉妹間の仲が良くなかったのだ。
そこに導師と信子が現れて、その夜12時に月光亭で導師が奇蹟を見せることになり、家族や野上、俊介ら全員が立ち会うことになった。導師と信子は夕方からどこかに篭り奇蹟の準備を始め、家族は思い思いに過ごした。
12時少し前に家族たちは月光亭の見える本邸の食堂に集まったが、信子だけはどこに行ったのか夕方から行方不明だった。
食堂から月光亭を見ていると、ガラス張りの部屋に導師がいるのがロウソクの光でわかった。月光亭には電灯がなく、夜はロウソクだけが明かりだった。
そして12時直前に本邸が停電し、集まっていた豊川家の家族たちは暗闇で大混乱。しかしブレーカーが落ちただけとわかり、停電は少しして復旧した。そのとき月光亭を見るとロウソクの明かりが消えていた。
異変を感じて野上や俊介、そして寛治ら家族が月光亭に駆けつけると月光亭は内側から鍵が掛けられて密室の状態だった。ドアをぶち破りガラス張りの部屋に入ると、そこには信子の死体が横たわっていた。
信子の死体は体中を紐で縛られてその紐は床に釘付けにされ、そして掌にはロウソクが立てられているという異様な状態であった…
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -